デートの件から数日が経ちました。
あれから本当にぱったりいじめもなくなり、相田さんの話も聞かなくなった。同じクラスの赤也くんに聞いてみても、気持ち悪いくらいに何もして来ないと言うので…まあ約束はちゃんと守ってくれているみたいです。
とりあえず平凡な日常は戻ってきたってことで。
「はーい、今日のホームルームは席替えしようかー」
「「「えーっ!」」」
「えーっじゃない、するったらするのよ」
ざわざわ…
『嘘っ…って事は柳くんと離れるかもしれないの?』
「そうだな」
『いやだ…柳くんと離れたら私何にも出来ない。それにクラス内に柳くんしか友達いないのに、孤立しちゃうよ』
「元々してるだろう」
『ひどっ!…でもだってっもし忘れ物した時とか誰に借りればいいの?』
「忘れ物をする事が前提か。…隣の奴に借りれば問題ない」
『いやだっ』
「いやだじゃない」
なんて中途半端な日に席替えなんかするんだ…もうずっとこの席が良い。
「くじはさっき作っといたから、この箱の中に入ってる番号の通りにすわりなさーい。黒板に番号書いといたからーその席ねー。はい、さっさと並ぶっ」
先生の指示通り、箱が置いてある教卓の前にみんな並びだした。
私もそれについて、並ぶ。
『隣じゃなくても良いからせめて、近くの席にっ!お願いしますっ』
「誰に頼んでるんだそれは…」
『神様にっ。…柳くんはいいの?離れても』
「あぁ」
『即答っひどいこの人…(泣)』
そして自分の番がやってきた。最後まで願掛けをしながら、箱に手を入れ探る。
『………よし、これだっ…あ、やっぱこれかな。…いや、やっぱり奥の…』
「…早く取れ。次が詰まってるぞ」
『あぁごめん。……これでいいや』
柳くんに急かされて、適当な奴にしてしまったけど…まあいっか。
えーっと、私の席は…前の方かな。
『柳くんはどこ?』
「一番後ろの真ん中だ」
『えー…遠いじゃん。私一番前の端っこ。校庭側の』
「…お前もやっと親離れが出来るんだ、この機会に少しは社交性を身につけてこい」
『なにそれ。いやだ』
「いやだじゃない」
あーあ……もうちょっと粘って考えればよかった…適当に選ぶんじゃなかった。
自分の席に座ってなんとなく柳くんの席をみるとやっぱり遠くて、なんだか心細い。今までは隣に柳くんがいたから、普通に過ごしてたけど…こんなに不安だなんて思いもしなかった。
『うぅ……絶対だめだ…』
「―…さん」
『心細い…帰りたい…』
「おーい…」
『…ぐすっ…』
「おーいってば小波さんっ」
『えっ!?』
隣の席の女子に呼ばれて、伏せていた顔を勢いよくあげる。
振り向いて隣を見たら、その子は苦笑いで「大丈夫?」と声をかけてくれた。
『……あっ…え…あうっ…だいじょぶッス』
「あはは、小波さん可愛い(笑)これからお隣さん同士仲良くしてね」
『あっ…は、はい…』
うわあああっ!!話しかけられちまったよー!!どうしようっ名前…名前が思い出せない!誰だっけ!テニス部のファンじゃなくって可愛い子だったから何となく知ってるんだけど………さい…さい…西条さん?あれ?…斎藤さん?
「小波さんって柳くんと仲良いよねぇ。一度話してみたかったんだけど、いっつも一緒にいるじゃない?だから付き合ってるのかなーって思って。邪魔しちゃ悪いし声掛けづらくってさ」
『いや………付き合ってないです』
「あ、そうなんだー。でも本当いつも一緒じゃない?みんな勘違いしちゃうよー」
「…あはは」
「あっごめん、もしかして名前わからなかった?私、西条若菜。若菜って呼んでね」
『は、はい』
「メアド交換しよー」
『えっ…あ、はいっ』
西条であってたのか。しかもちゃっかりメアド交換しちゃった。………あれ、もしかしてこれ友達フラグ?…なのか?…わかんない。なんかテンパってわかんないよ。
……と、とりあえず後で柳くんに聞いてみよう。
キーンコーン…―
ガタガタ…
『柳くんっ!』
「…なんだ、そう慌てるな。机にぶつかるぞ」
『ささ西条さん…あ、違う。わっ若菜ちゃんとっとともっとももがっぽいらしいの!』
「………あぁ、友達が出来たと言いたいのか?」
『そっそう!メアド交換したからそうだよね!?』
「よかったな。これからは俺ばかりに頼らず西条に頼れ」
『ちょっ……冷たい………またテンション下がった…柳くんの馬鹿』
「俺のせいか」
『柳くんのせいでしかないんだけど』
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