柳side



「面白かったですねー映画!」

「…まだ居たのか…(というか隠れる気あるのか奴らは…)」

「ん?今何て言いました?」

「いや、何でもない。…次はどこに行くんだ」

「?次はあっち行きましょうか」



俺達が映画館から出て来た時、すぐそこにある喫茶店のテラスに奴らが見えた。
あれほど来るなと言ったのにやはり来た小波と、何故か居る精市、赤也、中原。
本当は待ち合わせ場所に隠れて見ていたのに気づいていたのだが、すぐに帰るだろうと思いあえて気づかないフリをしていたのだが……もしかして、最後までついてくるつもりなのかアイツらは。



「あっ、そうだ先輩!私ちょっと欲しい物があるんですけど、買い物に付き合ってもらえますか?」

「……あぁ…別に構わないが…」

「やった!じゃああのお店いきましょうかっ」
グイッ
「……」



先ほどからコイツは、勝手に腕を組んで強引に引っ張って行く。そのせいで気分が悪くなったので、ワザと不機嫌な顔をして見せたたのだが全く気づかない。…本当に空気の読めない奴だ。
今日1日だけの付き合いだかなんだか知らないが、俺はこういうのとは絶対に付き合いたくない。
まだ小波といる方がましだな。
アイツならこういう時は、ちゃんと適切な距離を保つだろうし、必要以上にくっ付いて来たりはしない。あとは自分の好きな所ばかりではなく、相手の好む場所にも付き合うだろうし、苦手な所でも嫌々ではあるがついては来るんだろう。
それに、ちゃんと俺の表情に気づく。今の相田みたいに空気の読めない奴では無いからな。…自分の恋愛に対しては読めないみたいだが。あとは……………………ん?



「きゃーっコレ可愛いっ!ねぇ柳先輩っこれ私に似合いますか?」

「…ちょっと待て…」

「はい?待てって…?」

「いや、何でもない。似合うんじゃないか?」

「はぁ……?」



…ちょっと待て…本当に、何故ここで小波が出てくるんだ?おかしいだろう。…別に今のは小波で無くとも良かったはずだ。しかもアイツなら付き合っても良いと云うような内容で…。

…最近の俺はどうもおかしい。
小波の事になると、どうしても世話を焼いてしまったり、何かと構ってやりたくなったり。
それを見た友人達に母親みたいだと言われたり、付き合ってるみたいだと言われたり。…だが不思議とそれが嫌ではない。
これが他の女子なら不快だろう。小波だから許せる。
友人だからとかではなく、他とは違う…何か別の意味らしいのだ。



「先輩っどうしたんですか?さっきからずっと上の空ですよ」

「…あぁ、すまない。…悪いが少し手洗いに行ってくる」

「あ、はい。いってらっしゃい」



………まさか、そんな筈は無い。あいつがただ、やたらと世話を焼かせる性格だからだ。だから決して好きだとかそういう浮ついた感情などではない。…確かにごくたまに可愛いとか思ったりもするが、それは別に好きとか云う意味では無いはずだ。



「…そうだ、思い違いだ」

ドンッ…べしゃ

『あいてっ』
「あ、申し訳な…」
『す、すいませ…ってああああっ!!私のアイス!!!ちょっと貴方なにしてくれて………っっ!?(しまった柳くんに見つかっちまった!!)ごめんなさいでした!!』

ダッ…ガシッ

「待て小波」

『ひぎゃあー!すみませんっした!私小波と違います!人違いっす!肩っ肩掴まんといてください!あれ、赤也くん?赤也くんさっきまでいたのにっあれ?どこー!?』

「…別に怒らないから落ち着け」

『でも怒るって言った!』

「怒らない」

『…ほ…本当に?…はぁ…良かった。来るなってあれだけ念を押して言われたから、見つかったら絶対怒られると思ってた』



ぶつかった相手は小波だったらしく、俺に気づいた途端に逃げようとしたので、肩を掴んで引き止めた。
…しかし、考えているそばからコイツに会ってしまうとは…。
わざわざ隠れて見ているので、わざと知らないふりをしてやるつもりだったが…仕方ないか。



「赤也と精市と中原もいるんだろう」

『居るけど……もしかして柳くん、最初から気づいてた?』

「当たり前だ…お前達は隠れる気はあるのか?先ほども、ガラス張りのカフェテラスに堂々と座っていたではないか」

『…すみませんでした。考えが浅はかだったと思ってます』

「………はぁ…」

『ちょっと、何でそこでため息?』

「…別に深い意味はない。気にするな」

『なにそれ何か気になるんだけど』



こういう事はあまり考えすぎるのは良くないな。調子が狂う。…小波の事についてはまた考えればいい。とりあえずは今のままで問題無いだろう。



101/112
prevnext
bkm

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -