日曜日になりました。
今日は柳くんと相田さんのデートの日です。
「あ、美姫来たみたいだよ」
「あいつ10分も遅刻ッスよ。柳先輩良く怒らないっすよね…」
「切原くんも今来たじゃない。人のこと言えないよね。もしあの子が時間通り来てたらどうするつもりだったの」
『…そうだね』
ということで私は今、柳くん達に見えない場所に隠れているんですが……一緒に幸村くんと赤也くん、そして夕陽ちゃんまでここにいます。
何故か居るかというと、理由を聞けば3人とも「面白そうだったから」と口を揃えてそう言いました。…まあ私と一緒です。
こんな状況なのは、あの後一応今日のデートの件や事情を皆に話をしたからなんですが…、私が、2人の待ち合わせの20分前には待機しようと来た時には、もう既に幸村くんは来ていました。
そして「やっぱり来たね」と爽やかな笑顔で言われました。
…そこはまあ幸村くんなら仕方ないなと思うことにした。
で、よく見ると幸村くんの隣に女子がいたので思わず二度見。
その人は、服装は物凄くオシャレなんだけど、その格好にそぐわないデカめな真っ黒サングラスをかけて、帽子を深く被った、妙に睨みを利かせたガラの悪そうな怪しい人だったので本気で誰だかわからなかったが、よく見ると夕陽ちゃんだった。
本人も、サングラスが真っ暗過ぎて私が見えなかったからガンを飛ばしてしまったのだと謝って来た。こういうたまに間抜けなところがまた可愛い。
…正直ちょっと怖かったんだけど、口に出してしまったら傷つくんじゃないかと思ったから言わないで心の中に留めておく事にする。
後は赤也くん。
夕陽ちゃんの言う通り、今さっき来ました。待ち合わせ時間の10分遅刻な相田さんよりは早かったけど。
でも来たときのテンションがいつもより高かったのは気のせい…じゃないかな。
「遅れてごめんなさい!…それじゃあ行きましょうかっ先輩!」
「…(本気で謝ってるのかコイツ…)」
相田さんはついてすぐ柳くんの腕を取って移動する。
私達もそれについていき、影に隠れながら見守る。
しばらく歩いて最初に着いたのは、映画館。
2人が何の映画を観るのかわからないので、とりあえず終わるまで待とうと云う事になる。
「てゆーかさすが中に入ってまではね…」
『うん…。それに観たい映画があるわけでもないし』
「あ、そこの喫茶店なら見晴らしもいいし、あの2人が出て来たらすぐわかるんじゃない?」
『そうだね、あそこに入ろっか』
―――――――――――…‥
店内に入り、私達は外がよく見える席に座った。
そして一息ついた頃、夕陽ちゃんが口を開いた。
「あのさぁ、思ったんだけど」
『ん、何?』
「柳くんってさぁ、ほんとはアレだよね。女子とか苦手的な?」
『さぁ…どうだろう。普通じゃない?』
「うーん…だって晴乃ちゃんみたいに砕けて話してる女子って見たことないし」
『え…あれって砕けてんの?ただ冷たいだけだよ』
「そこよ!冷たいってゆーかツンデレみたいな態度ってやっぱり晴乃ちゃんだけだよなぁって。柳くんってだいたい誰にでも優しいじゃない?ほら、あんなに苦手だった相田さんにも一応大人な対応だし。何度も言うけど、絶対柳くんって晴乃ちゃんの事好きだよ!」
『ちょっちょっそんな迫って来られても…(汗)しかもこんな所でそんな事を大きな声で…一旦落ち着こう。はい、水飲んで』
急に興奮しだした夕陽ちゃんを落ち着かせようと、冷水入りのコップを持たせたら、一気に飲み干して空のコップをドンッと机に置いた。私はそれを苦笑いで見つめる。
「でも、蓮二も晴乃と同じでわかってないよね」
「そうっそうなのよ幸村くん!この鈍感二人を早くどうにかしないとダメだと私は思うわけよ」
「…俺はまだ分かんなくても良いかな…なんて」
「……切原くんはこんなにも分かりやすいのに晴乃ちゃんは無反応でしょ?」
『え?』
「挙げ句の果てにはコレだもん。私心配で心配で…もうさ、とりあえず何でも良いから付き合っておきなさいって。そしたら進展すると思うんだ」
『いや、とりあえず付き合うって…』
柳くんと付き合うって…なんか想像もつかないな。
てゆーか私にはあんな和風美人なイケメンは釣り合わなさ過ぎだと思うんだけど。
なんでそんなにごり押しするんだ夕陽ちゃんってば。
『…イケメンは目の保養で十分だよ。あれだよ、この人達と友達になれただけでも奇跡ってゆーか…私なんか全然釣り合ってないし…こんな平凡顔な変人絶対彼女にしたくないでしょ…』
「卑屈っ晴乃ちゃんってば卑屈!だめだよそんなんじゃ!…あっ、じゃあ切原くんと付き合ってみたら?」
「!?」
『赤也くんと?…いやまぁ…こんな可愛い後輩が彼氏とか夢のようだけど…。てゆーか赤也くんにも選ぶ権利あるよ。ね?』
「お、俺は…そのっ…なんつーか…だから…えっと」
『?』
「(こういう事になると切原くんってヘタレよね…)幸村くん、晴乃ちゃんと付き合ってみない?」
「うーん…どうしようかな?ねぇ、晴乃」
『…私に聞かれても困るんだけど…』
そして、映画館から柳くん達が出てくるまでずっと夕陽ちゃんに何故か説教されてしまいました。…ホントなんで鈍感ってだけで説教されたのかわからないけど。
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