【部室】
ドンッ
「チーッス!晴乃先輩連れてきたッスー!」
『…あ…つ、ついたの?』
「あぁ、赤也か。そんなに勢い良く開けたらドアが壊れちまうだろ」
「てゆーかそれ、何やってんだよぃ」
「お姫様抱っこだね」
「何でお姫様抱っこされて小波がぐったりしてるんじゃ」
「乙女っぽいのが苦手だからだそうだ」
「なんだ、蓮二も一緒だったのか」
部室には、もう柳生くん以外のレギュラー陣は揃っていた。
呑気にトランプなんかしてくつろいでいる。
『も、もう良いよ…赤也くん』
「はぁい」
さっきは、夢中で走っていたので降ろしてくれなかった赤也くんだったが、部室に着いてやっと降ろしてくれた。
…何でかな…物凄く疲れたよ、私。
「それで、ファンクラブの会長って言う…うさぎさん?はまだ呼んでないの?」
「宇佐見だ。…呼び出すのは柳生に頼んである。もうすぐ来ると思うが」
『はぁ…』
「なにお前、何で片方だけスリッパ?」
「プリッ…もしかして怪我したんか?」
一旦休憩しようとベンチに腰掛けていたら、丸井くんと仁王くんが右足のスリッパを見てそう言った。
けど、何となく独りにしてほしかった私は、スッとベンチの端っこに移動した。
『や、まぁ。別にもう痛くないから気にしないで…後で上履きに履き替えるし。だから近くに来ないでください』
「心配してんのに何でそんな嫌そうなんだよ。つか逃げんなって」
「何じゃ、構って欲しいんか?ん?」
『構って欲しくないから逃げてんでしょーが。こっちくんな、なに構えてんの!マジでそういうの要らないってばっ!ちょっ…ぎゃーー!』
何故かくすぐり体制に入った丸井くんと仁王くんにわき腹を攻められる。
「ほれほれ、こちょこちょーっとな」
「わき腹弱いな、小波」
『あはははっこちょこちょとかっ小学生かっ!やめろっセクハラー!!ひゃあーっっ!!赤也くん助けて!!』
「……先輩達って仲良いっすよね。羨ましいッス」
『何言ってんのあの子!?もうむりっ…たすけっぎゃははははっ…うっく…あああっスケベーッ!!バカー!!』
「うるさいぞお前たち!部室で暴れるな!!たるんどる!」
バタバタしていたら真田くんに怒られてしまった。
「へーい」
「そんなに怒んなさんな。ただ可愛い妹と戯れてるだけぜよ」
『ぜー…はー…誰が妹だよ…。仁王くんを兄と思った事なんか一度もないし』
「でもコレで元気でただろぃ?お前、最近笑ってなかったし」
『なっ……も…もっと普通に元気付けてよっバカバカ!ぶたっ!ホクロ!』
「照れてやんの」
「照れとるな」
『照れてないもん!』
「アイツら呑気すぎだろ…」
「ふふふっ…楽しそうで良いんじゃない?」
「そーっすね、晴乃先輩が楽しそうで良かったッス」
「全く、仕方のない奴らだ…」
「たるんどるわ!お前たち、今から何をするのかわかってるのかっ!小波、お前の事なんだぞ!」
「うわっわりいっ!殴るのは勘弁!」
「すまんかったっ真田!落ち着きんしゃいっ」
『ごめんなさい!全部丸井くんと仁王くんのせいだからっ私関係ないから!』
「逃げんなよっ小波!お前が一番デカい声出してただろぃ!」
『うるさいっ!出してないし!』
…結局は真田くんのせいで逃げ回って、またバタバタする事になる。
けれどすぐに捕まって正座をさせられ、丸井くんと仁王くんの後に何故か私までげんこつを食らった。
私は被害者です。完全にとばっちりだよちくしょう。
ガチャ
「申し訳ありません、遅くなりました。宇佐見さんをお連れしまし…ん?…何かあったんですか?」
「あぁ、何でもないから気にするな」
「?…そうですか」
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