昼休みになりました。
あれから柳くんは、柳生くんに頼んで、宇佐見さんを部室に呼び出してもらうことにしたらしい。
それを聞いたとき何となく、なんで真田くんには頼まなかったのか気になったので聞いてみると、柳くんは「弦一郎にこういう事を頼むと、動揺で余計な事まで話してしまいそうだからだ。それで宇佐見を呼び出せなければ意味がないだろう」と言っていた。
…まあわかるけども。

それからあとは、レギュラーの人達にも集合をかけたと言っていた。夕陽ちゃんは残念ながら委員会なので不参加。レギュラーに集合をかけた理由は…俺達にも見届ける義務があるからだ、だそうです。

ということで今から部室に向かうところで、さっき廊下で偶然会った赤也くんも一緒です。



「あれ、先輩…足怪我したんすか?右足だけスリッパっすね」

『あー…うん。画鋲がグサッと刺さっちゃってさ』

「それってイジメで?なんつーか、女子って陰湿っすよね…俺、今まで耐えてた先輩の事マジで尊敬するッスよ」

『まあ女子なんて陰湿な生き物だからね。…って尊敬しちゃうの?』

「はい。だって俺なら耐えらんねーッスもん。……そうだ!まだ痛いなら、俺がおんぶしましょうか?」

『!?…い、いいよ。もうそんなに痛くないから』

「遠慮しないで下さいよ。はい、乗った乗った!」


そう言ってニコニコながらしゃがみ、背中を向ける。


『…っ…どうしよう、柳くん。私、乗って良いの?ねえっ乗って良いの?』

「俺に聞いてどうする。…赤也は乗れと言っているだろう」

『や、だって…もう痛くないのに乗れないし……その前に理性とか色々危ないっていうか…』

「何ブツブツ言ってんすかっ良いから早く!先輩!」


そんなに言われたら遠慮しないぞ、赤也くん。
勢いで抱きついてキスしちゃうぞ、良いのか?良いのか赤也くん。


「それは良くない。変態だぞ」

『ちょっ勝手に心読まないで。…まあ、そうだよね。私には無理だ』

「もーっ遠慮しなくて良いって言ってんのに!」

ぐいっ

『えっ!?』



急に引っ張られたかと思うと、体がふわっと宙に浮いた。
すると目の前には赤也くんの顔。
一瞬の間何が起きたのかわからなかったが、なんと、そのまま私はお姫様抱っこをされてしまったみたいだ。
柳くんもビックリして開眼している。



『あかっ赤也くん!?こ、ここ、コレはどどっ、どういうっ事!?」



なんかもう、動揺で上手く喋れない。



「先輩が背中に乗らなかったからッスよ。よし、行きますよー!」

『ちょっちょっまっ!柳くんっ!?ヘルプミーッ!!』

「それこそ無理だな。お前は赤也の好意を無駄にするのか?」

『そんなこと言ったって!私っこういう乙女っぽいの苦手っ…ぎゃああああっ赤也くんのお馬鹿ー!!』



と云うわけで、必然的にお姫様抱っこのまま部室まで連れて行かされることになったのでした。
こんな事なら素直におんぶさせてもらうんだったと、本当に後悔した。

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