保健室についてから、先生が治療中にどうしてこんな怪我をしたのか聞いてきて焦った。

こんな所で先生にバレてしまえば一番ややこしくなってしまうので、とりあえず適当な事を言ってごまかした。
柳くんも一応それにノってフォローしてくれたので、先生は納得はしてくれたみたいだ。



『ふー……朝から無駄な体力使ったなー。疲れた』

「俺の方が疲れたんだが」

『ごめんごめん、おぶってくれてありがと柳くん』

「…あぁまあ…別に構わないが。それよりお前、着替えに行く時間もう無いんじゃないか?」

『…え?』

「一限目の体育。俺は教室で着替えれば良いが、お前は更衣室に行かないと着替えられないだろう。あと10分で予鈴なるぞ」

『ちょっちょっとー!それを早く言ってよー!!』

「やはり忘れていたな」



そして、急いで着替えにいってギリギリ一限目の体育に間に合った。

…のですが、校庭に着くまでに足の指の痛みが半端なく蓄積されてきていた。しかも外周を3周走るとか足がヤバいかもしれない。
今更見学しますとも言えないし、どうしよう。

あと、今日はC組と合同授業らしい。C組は幸村くんのファンもいるからちょっと困るんだよな。過激な子が多いから…



『(てゆーか、マジで痛い)…ムリかもしれない…』

「晴乃」

『!!…ゆ、幸村くんか。おはよう』

「うん、おはよう。…で?何がムリかもしれないって?」

『え…あ…えっと、足が…』

「足?足がムリかもしれないって…もしかして怪我したのかい?」

『う、うん。で、でも多分まだ行けるから、大丈夫』

「大丈夫って…今ムリかもって言ってたのに。…てゆーかそれ、ファンの子にやられたんだよね。晴乃をイジメてる」

『…もう良いから…幸村くんはあっちでしょ、ここに来たら邪魔…目立つからあっちに行っててよ。ね?』


「…俺を邪魔者扱いするなんて晴乃も偉くなったね。そんなに嫌なら、今日はワザとくっついてようかな」

『ご、ごめんなさい。邪魔者扱いとかそういうのじゃなくて、あの本当、すみませんでした。勘弁してくださいお姉様』

「フフフッ…別に良いけど。その代わり、辛くなったらちゃんと俺に言いなよ。今日の外周を走るの、晴乃のペースに合わせてあげるから」

『え、でも…わざわざ女子のペースに会わせなくても…』

「俺がそうしたいからそうするの。それに、ただのウォーミングアップで一番にならなくても良いし」

『(一番になるつもりだったのか…)…そっか。わかった』

「ね、蓮二も一緒に走ろうよ」
ガシッ
「精市…俺は自分のペースで…」
「蓮二も一緒に走ろうよ」

「…わかった。俺も小波のペースに合わせよう」

『あぁ、うん。なんか良くわからないけどありがとう』



捕まった柳くんも私のペースに合わせて走ってくれることになった。

「そこまでして見張ってくれなくても良いのに…」とつぶやいてみたら、「一応心配なんだよ、俺だって」と返されてちょっとドキッとした。
…そんな事言われたら惚れるし。やめてくれ。


でも…幸村くんも、なんだかんだで優しいんだよな……いつもはド鬼畜だけどさ。



「まぁ、これだけ近くにいれば晴乃に何かしようっていう輩はいないだろうし。丁度良いだろ?」

『輩って…けど、柳くんはデータ取りにくいんじゃない?』

「まぁ何とかなる。…それに、この位置なら女子の声も聞き取りやすいしな」

『へぇー…(ここから声を聞き取れるのか…凄いな)』



やっぱり走ってる最中鋭い視線が私に集まってたけど、何かされる事は無かった。
当たり前だけど怪我はずっと痛かった。

そしてその後の体育の授業も、主に幸村くんの見張りのおかげで穏便に済んだのでした。

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