〈下駄箱前〉
『ねぇ、今日は何が入ってると思う?』
「…いつも何か入っているのか?」
『うん。昨日はね、上靴に画鋲が山盛り入ってた。ここだけいつも楽しみなんだ』
「楽しむな」
学校に着き、いつも通り自分の靴箱前で最初のいじめを確認する。これはもう何故か日課になりつつある。
がちゃん
『あれ、今日は何もないや。あーあ…残念』
「残念がるな。何もないなら良かったじゃないか」
『あーうん、そうね』
なんかの肝とかゴキブリの死骸とか入ってたときの衝撃は正直嫌だけど、死ねとか永遠に書いてある手紙とか画鋲類なら気にならない。
むしろ次はどんなのがくるのか楽しみだったりして。…いや、マゾじゃないですよ決して。
「ちょっと待てその上履き」
『ん、何?…(グサッ)いったいっ!!足の指に何か刺さった!!』
「奥に画鋲があるぞ」
『ちょっ履く前に言って!…今日も画鋲だったのか!』
「俺はちゃんと履く前に待てと言っただろう」
『遅いよってゆーか何でそんなに冷静っ…柳くんのアホー!いーたーいー!痛さが尋常じゃない!死ぬっ!』
上履きの奥にあったらしい画鋲が、刺さった足の親指に相当な刺激を与えてくれやがりました。
血とか出てないよね?え、出てるの?当たり前だとか言われても今そんな事考えてられないくらい苦しいんですけど。
もう周りの視線とかどうでも良くなってきた。
本気で叫びたい。
「それぐらいでは死なないから安心しろ。とりあえずその上履きは脱ぐんだ。保健室に行くぞ」
『歩けなっ、歩けないってば!おんぶっ…おんぶしてください!』
「…仕方ないな。今回だけだぞ」
『こ、こんな時でもツンデレっ。…とにかく早くっ!痛い!!』
「耳元で大声を出すな」
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