そして昼休みが来て、いつも通り柳くんと屋上で昼食。

私は何となく話すタイミングが掴めなくてそわそわと別の話題を振ってしまう。



『今日のも相変わらず美味しそうなお弁当だね』

「あぁ、やらないぞ」

『わかってるよ……そういえば昨日、予告無しに突然赤也くんが家に来てさぁ、その後丸井くんとジャッカルくんまできて…』

「そんな事よりお前」

『え?』

「俺に話す事があるんだろう。それを先に話さないのか」

『!…………あー…うん…そのー…まぁあるけど…』



うぉぉぉっ…柳くんから振ってきたぁあ!!
どうしよう!なんて説明すれば良いんだ!!



『……あの……えっと…とりあえず』

「うむ」

『だから、その…さっきの…あれを…』

「…わかった。お前はさっき逃げた事について謝りたいと言いたいんだな?」

『っ…そうそう!』

「まあアレは気にしていない。それと、後は何だ」

『後は…えーと………き、気づいてたかも…しれないけど…私…その…アレで…』

『俺達テニス部のせいでイジメられてると言いたいんだろう?』

『そうそう!…や、でもテニス部のせいっていうか……あー…やっぱり柳くん全部分かってたんだね…』

「当たり前だ。あれで隠せていたと思う方がおかしい」

『デスヨネー』



そのままため息をついた柳くんは、手に持っていたお箸を一旦置いて数秒間、間を開けてから口を開く。



「何で今まで言わなかったんだ」

『……』

「こういう事は、友人なら話すべきだと俺は思うが」

『…だって…こういう事で迷惑かけたくなかったから…』

「寧ろ迷惑をかけたのは俺達では無いのか?」

『で、でも…あんまり大事にしたくなくて…。言ったら言ったで柳くん達に余計に迷惑かけるから』

「小波はいつも変な所で気を使うからいけないな。それに友達なんて迷惑をかけて当たり前だろう」

『そんな事、言ったって……だって…言うの、怖かったし………私が耐えて…自分で解決すれば…問題ないって思っ…』



あ、あれ?……なんか涙出て来ちゃったよ。
なんで?私一応、心の中でちょっとしたことで泣かないって決めてたのに……なんで出ちゃうんだろ。
話しながら割と辛かった事とか思い出したからかな…



「お、おい泣くな。…や、でも俺もあまり責めすぎだったかもしれない。悪かった小波」

『うっ…ひっく……うぇぇっ…ごめんなさぁい…!』

「あぁ、わかったから…落ち着け、な?(困った。本気で泣かせてしまった)」



この後の柳くんは大分困った表情だったけど、落ち着くまで優しく宥めてくれた。
てかこんなに優しい柳くんって初めてなんだけど。
あんまり優しいから余計に涙が出てきて収集が付かないし。

もう……だから言うの嫌だったんだ。絶対泣くって自分で思ったもん。



『……ごめん………ひっく……本当は泣くつもりじゃ無かったんだけど…勝手に涙が…ぐすっ』

「お前が泣き虫なのは分かっていたんだが、本気泣きされると困る」

『泣き虫じゃないよ…っ…だからごめんってば…っ』

「ヤケになるな。それにさっきから謝ってばっかりだぞ」

『……ごめん』

「もういい。…そろそろ落ち着いたか?」

『…うん』

「…仕方ないな、今日は特別だ。俺の卵焼きをやろう」

『本当!?ありがとう!』

「あぁ」


こうしてなんとか話がついて、やっと昼食を再開。

そしてさっそく、さっき柳くんから貰った卵焼きを食べた。
あんまり美味しくて泣いた後なのに顔が綻んでしまう。

それを見てたらしい柳くんは何故か吹き出して笑った。
何で笑うのって言ったら、顔が面白かったからと震えながら返されてなんだか腑に落ちない。
……私そんなに面白い顔で食べてたの?

まあとりあえず柳くんには言えたし、気は楽になった気がする。


「そうだ…これからまた何かあったらちゃんと俺に言うんだぞ」

『え?…何で?』

「何でじゃない。お前、さっき俺の話をちゃんと聞いてたのか?…もしかしたらその場で俺が何とか出来るかもしれないだろう」

『わかった…言うよちゃんと』


でもあんまり心配しすぎかもな…。
さすがお母さん。

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