《屋上》



『ふぅ……』


あのあと柳くんに「ごめん、やっぱり今日はサボるから…先生には適当に言っといて」とメールを送っておいた。
すると数秒後、「仕方ないな…この借りはちゃんと返してもらうからな」と返信が来たのでホッとする。

でもとりあえず、何も聞かないで言った通りにしてくれる柳くんに感謝しないと。



あ、それはそうとこの屋上、いつも昼食の時にだけ来てすぐ戻るからちゃんと見てなかったけど…奥の方が園庭になってるんだっけ。
…確か幸村くんが手入れしてるとかきいたこともある。


『どうせ暇だし花みてぼーっとしようかな…』


フラフラ〜っと園庭の方に足を進めると、花壇に見たことのある後ろ姿が見えたので、確かめるために少しずつ近づいて覗き込んでみたら幸村くんだった。


「…ん、晴乃?」

『やっぱり幸村くんだ。おはよ』

「おはよ。…それより、何で授業始まってるのにここにいるのかな?」

『うっ、あ…えっと…サボリ、です』

「まあそうだろうね。一限目からサボるなんて悪い子だね、晴乃」

『ごめんなさいっ…でも今日だけは見逃してください!』

「ふふっ…別にいいけど?ていうか俺先生じゃないしそんな事で怒らないから」

『…あ、うんそうなんですけど、なんかこわk』
「ん?何て?」
『…何でもないです』



…やっぱお姉様怖いです。



『……てゆーか幸村くんもサボりでしょ?』

「俺は違うよ。先生に許可とってるし、花壇に水やりに来てるんだから」

『え、いつもこの時間に水やりしてるの?』

「ううん、今日はたまたま。ここの管理を頼んでる先生が、昨日水やり出来なかったって言うから」

『あぁ…そうなんだ』



幸村くんは、私と話しながらも丁寧に水やりをしている。
…なんていうか、花を見てる幸村くんって凄く穏やか。
よっぽど花が好きなんだろうな…


「うーん…大分日焼けしてる葉が多いな。…先生、水やりしかしてなかったのかな」

『…葉が日焼け。夏だから?あれ、9月って秋?』

「夏じゃなくても日差しが強ければ日焼けはするよ。外で育ててるとどうしてもなっちゃうからね…仕方ないんだけど。でも草取りもあまりしてないみたいだし……先生には管理を頼んでたハズなんだけど。…ふふふっ、コレは後で先生と話しないとな」

『…何で今笑ったの?』

「え?俺今笑ったっけ?」

『い、いや。空耳かも…はははっ』


だ…大丈夫だよね。先生、死なないよね。
…今の、私は何も聞いてなかったって事にしとこう。


「そうだなぁ…草取りはお昼休みにしよう。もし暇なら晴乃も手伝いに来てよ」

『えっ私が?……まぁ暇だから別に良いけど…今日はテニス部は昼練ないの?』

「ないよ。じゃあ、草取りは土で汚れるから体操着を着てきた方が良いかも」

『た、体操着!?』

「?……もしかして無いのかい?」

『う、うんっ無い!仕方ないから制服でするよ!』

「ふーん…そう。わかった」



……そういえば私、さっき体操着切られたからここにいることを忘れてた。
あまりにボケッとしすぎてて一瞬忘れてた。
体操着は着れる状態じゃないし、このこと言ったら幸村くんにバレちゃうもんね。危ない危ない…

まあとりあえず、一限目が終わるまで幸村くんとゆったりと過ごした。

そして休み時間になってから教室に帰ると、柳くんが少し不機嫌だった。
何故サボるんだと言いたそうな顔をしてるけど、何も聞いて来ない。
…もしかしたら柳くんはホントは全部分かってるのかも。けど、私が言わないから聞きづらいのかなと思う。


『あの、ごめんね。サボるとか言って』

「……まあ良いだろう。ただし、次はフォローしてやらないからな」

『はぁい…』


なんだか、柳くんにはいっつも迷惑かけすぎだよな。
…やっぱりこういうのは、自力で解決しないとね。

next.

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