約束の障害

スタースクリームとの出会いが私の何を変えたかは言わなくてもわかるだろう。今まで模範的な訓練生であり、兵士であることを誇りに持っていたのが一瞬にして崩れ去ろうとしている。

――ディセプティコンに来いスカイファイアー

彼のこの一言に、私は迷うことを止めた。アニメの中のスカイファイアーなら断るはずだ。私の居場所はオートボットだから、と。だけど私は私だ、成り代わったとはいえ自分の意志でここまできたスカイファイアーなのだ。もう、あんな想いはごめんだから、だから私はオートボットを裏切ろう。

誰にも悟られてはいけない、抜け出すチャンスは一度っきりだ。それに、噂で私が裏切るというものがあるらしい。当たっているのだがそれを露見しては意味がない。だけど人当たりの良い私だからなのか疑う者は少ない。だから動くには問題ないのだが大きな障害がある。それは…


「スカイファイアー? なんばしょっと」
「あ、ラチェット。良かった君に会いたくて」
「おいに?」
「ああ、怪我してるから治してもらおうかと」

彼だ。ラチェットは頭の回転が速い。さすが医者とばかりに勘がよく働く。初代のときもそうだったけど敵に回したくないトランスフォーマーである。

「お前さん、ディセプティコンに捕まってたらしいじゃないか」
「うん、ザル警備だったからなんとか抜け出せたんだ」

これがそのときの傷だよと苦笑しながら答える。嘘は言ってない、まぁ真実に嘘をいれると真実味が増すとかいうけどそれは信用できないからね。

「お前さんも大変じゃな」
「ラチェットほどではないよ」

ほい、終わった。とリペアが終わり見事な腕を褒めたら褒めることのことじゃなかと照れてしまった。うん、前から思ってたけどラチェットも可愛いな。

おっと、こんなこと思っていたらスタースクリームに怒られてしまいそうだ。

「そうだラチェット、明日ベクターシグマ様のお祭りだよね?」
「ん?あぁ、全く戦争しとっちょるっていうのに、呑気やが」
「ふふ、少しぐらい息抜きしてもバチは当たらないよ」

穏やかに笑えばそうだなと笑い返してきたラチェットにホッと安堵する。良かった、ラチェットは私を疑ってはいない。
これなら明日の祭りに乗じて脱け出すことが出来る。

またなと挨拶をして背を向けるラチェットにまたねと声をかけた。










ラチェットはスカイファイアーを怪しんでいた。ディセプティコンから帰ってきてから雰囲気が変わったからである。
だが周りの人が気づかないほどの小さな変化、些細なことだ。話し掛ければいつもの穏やかな物腰で対応してくれるのだが、今やそれがわざとらしく思えてきた。

わかれた後、こっそりスカイファイアーをつけてみた。所々で上司や同僚に出会いたのしそうに仕事やプライベートの話をしている。そんなところを見ていたら怪しいのは自分の気のせいかと頭を過ったがその考えを改め再度後をつける。
着いたのはモニタールーム、情報部にある通信を行う場所だ。

なぜここに…?
この疑問がすぐにわかった。

きょろきょろと周りを見渡すためスカイファイアーに搭載された探査レーダーを使っているとわかり、妨害電波を流してみる。これでやり過ごせばいいのだが…と冷や汗を流す。
モニターに向き合ったのを見てやり過ごせたと安堵すると誰に通信するか確かめる。
これほど警戒しているということは…まさかスカイファイアーは。

「やぁ、スタースクリーム。明日大丈夫かな?」
「早いな、まぁこちらも準備しとく。だから失敗するなよ」
「もちろんだよ」

予感は、的中した。
スタースクリームといえばディセプティコンの航空参謀だ。メガトロンの右腕的存在と要っても過言じゃない。
その密会に遭遇してしまったラチェットは迷う。これを評議会に知らせれば、間違いなくスカイファイアーは裏切り者として裁判にかけられる。
かといって見逃せば大事な戦力が削がれ、さらにはこちらの機密が相手に渡ってしまう。

もう一度スカイファイアーを見る。嬉しそうな、楽しそうな顔。あんな顔は見たことがない。スタースクリームがスカイファイアーにとって大切な存在ということがみてわかる。

ラチェットは静かにその場を去った。












約束の障害
(スカイファイアー、おいは…おいはお前さんを)









‖後書き‖
書きたかったことだからすいすい書けた
時間があれば一日で完成できたかも
次回はいよいよスカファが!

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