記憶の欠片

あれから数ヶ月、何の音沙汰もない。普通ならオートボットの秘密や重要機密を聞き出すために拷問のひとつでもやるだろうと思っていたのだが、ここまで何にもないと拍子抜けしてしまう。

それより、この臨時基地を仕切っているのがあのスタースクリームということが驚きだ。初代でもまぁまぁな成果を上げたから何度か軍を仕切らせてもらっていたことはあったが、まさか惑星の支配を任されているとは思ってもみなかった。
でも、そのスタースクリームもここ最近会っていない。まぁ、あんなことした私が言うのもなんだが寂しい気がする。

でも、期待してもいいだろうか。キスした瞬間突き飛ばされたのは予想範囲内ではあったのだが、顔を見たとき真っ赤になったスタースクリームを見たときは思わず目を見開いた。反応がまるで彼だったから。私はもう駄目なのかもしれない。初代の彼とアニメイテッドの彼は別人と頭で分かっていても体は行動を起こしてしまう。

重たい機体を動かしてため息をつく。よし、どうにかここから逃げ出そう。
見張りは24時間交代制で隙がない。だけど穴はある、そこを狙えばいい。手にかかっている手錠を力任せに引きちぎり行動に出る。
まさかあの巨体で、しかもエネルギーが少ないのに逃げ出すとは思っていなかったのだろう、見張りのディセプティコンが一拍置いて慌てて追いかけてきた。

何ていうか、広いね。
臨時基地だからそこまで大したことないかと思っていたんだけど、そうじゃなかった。結構入り組んでいて構造もなかなかのものだ。これを設計したのがメガトロンだったら初代からのスパークをほどよく受け継いでいるんだなとしみじみ思うんだけどね。

おっと、考えていたら外が見えてきた。
トランスフォームしてなんとな逃げ出す。撃ってきたけど今度は当たらず回避できた。それでも質の悪いエネルギーのせいであまり遠くには逃げられない、仕方なく近くの惑星に身を潜めることにした。
探査能力は起動しているのでそれを駆使しエネルゴンを見つける。
見つけて気づいた、ここスタースクリームと初めて出会った場所じゃないかと。懐かしいなと思いつつエネルギー補給をしていると見慣れたジェット機が向かってきた。

「やぁ、スタースクリーム」
「よくも俺様のところから逃げたな」
「君が来ないから退屈で仕方なかったんだよ」
「う、うるせぇ!」

ああ、また顔を真っ赤にして怒鳴って…可愛いなぁ。そう思っているといつの間にか目の前に立っており胸ぐらを掴まれ引き寄せられる。

「っスタースクリーム?」
「…ディセプティコンに入れ」
「え、それは…無理だよ」
「言い訳はききたくねぇんだよ、俺様の言うことに従え」
「もう、強引だなぁ。でも、やっぱりむr「一緒に居るっていうのは嘘かよ!」…っ!?」

なぜ、君がそれを?
それは初代の、科学者時代のスタースクリームに言った言葉だ。必ずそばに、一緒にいると約束して…それを、なぜ?

「まさか、君は…」
「…約束は、守れよ」
「なんで…、どうして」

頭が混乱してきた。例え先祖のスパークを受け継いでいるとしても記憶があるわけじゃない。なのにこのスタースクリームは私が言ったことを覚えている。どうして…?

「お前が俺にキスしてきた時…ブレインに痛みが走ったんたよ。リペアの必要ないほど正常のはずなブレインが痛んで、そしたら…お前のことを思い出した」

あぁ、これは奇跡なのだろうか。彼が、今目の前にいる。二度と会えないことに絶望し、この運命を呪ったのに、愛しい彼がここにいる!












記憶の欠片
(君のためなら、私は心を悪に染めよう)










‖後書き‖
スカファがオートボットを抜ける覚悟を決めたきっかけですね
思わずスタスク記憶持ちにしたけど結果的によくなって良かった良かった


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