新たなる始まり

私は、また新たな人生を歩んでいる。

名前はスカイファイアー、これは前と変わらない。金属生命体で輸送兵、機体はほとんど前と変わらないが構造と内蔵されてある機能が高性能だ。
以前にはなかった探知機能に、燃費がよくなり砲撃出力が上がっていたりする。

この世界は、私は知っている。
初代の次はアニメイテッドだと。知ったのはつい最近、やっと自我が芽生えたときだ。それまで記憶があやふやで何をしているのかさえよくわからなかった状態であったためだ。

しかし謎だ。私の知っている限りではアニメイテッドにスカイファイアーはいない。いるとしたら名前が同じであるジェットファイアーがいる。
でも、まだ生まれていないようだ。なぜわかるのか、だって?そんなの周りをみたらわかる。戦争を、しているのだ。

また、戦争だ。
デストロンではなくディセプティコンが反旗を翻し、サイバトロンではなくオートボットを屈服させ、サイバトロン星を掌握しようとしているのだ。
私の知っているアニメイテッドでは、サイバトロン星は平和そのものだった。つまりこの戦争はその平和になる前に起こったもの、グレートウォーだと確信する。

そう確信したときに、私はとある惑星にて物資を調達する任務につかされた。サイバトロン星にはエネルゴンが底を尽きかけている、ゆえに輸送兵は他の惑星へ行き物資調達を言い渡される、というわけだ。
昔とやることが同じだな、と苦笑しながら私はサイバトロン星を発つ。

向かう惑星は生命体のない豊かな星。とりつくすとまでは言わないがそこの自然バランスを崩さない程度にエネルゴンを採ればいい。
命令されたことには従えない。なぜ採りつくさねばならないのか私には理解できないからだ。評議会は何を考えているのだろう。

腑に落ちない思いをしながらも惑星に降り立ちエネルゴンを探す。探知能力のおかげで難なく見つけることができたのだが、そのそばに誰かいるのを感知した。しかも反応はディセプティコン。
警戒しながら反応が見つかった場所の近くまで飛ぶ。後は徒歩で気配を絶ち近寄る。岩陰から見渡せば紫色のトランスフォーマーが岩を背に倒れていた。まだ若い、ディセプティコンだ。評議会に報告すればすぐ捕らえられて牢獄行きとなるのだろうけど、なぜか私はそれが出来なかった。彼から、目が離せなかった。

よく見れば腕やキャノピーに傷があり火花が散っている。恐らく抗争に敗れて命からがら逃げてきたのだろう。

「な、なんだお前」
「怪我、見せてくれるかな?」

私は何をしているのだろう。任務はエネルゴンの採取のはずなのに、気づけば彼に近寄りリペアを施していた。ディセプティコンの彼はエネルギーが尽きかけていたのか大人しく身を任せてくれている。
見た目の割に簡単にリペアでき、彼から離れる。そこの近くにあったエネルゴンを採るとそれを彼に渡した。

「お前…、オートボットが敵を助けてもいいのかよ」
「さあ? でも私は傷ついた者を嬲る趣味はないからわからないよ」
「…変な奴」
「よく言われる」

昔から、ね。
そう笑って言えば顔をそらされてしまった。照れ屋なのかな。
誰かに似ている彼はもう1人でも大丈夫だろうと背を向ける。ここにあるエネルゴンを採取しないといけない、早くしよう。黙々と作業をしていると背中に走る小さな衝撃。不思議に思い後ろを振り向けば先程のディセプティコン。

「…お前、名前教えろ」
「え、ああ…私はスカイファイアーだよ。君は?」
「俺は、スタースクリームだ」
「………え?」












新たな始まり
(ああ、神様。あなたはどこまで私を追い込むのでしょうか)









‖後書き‖
スタスクと気づかなかったのは姿形が原作の頃と違っていた、ということで


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