五
「おつかい?」
いつものように、気紛れのような学園長からのおつかい。
それを委員会で居なかった樹に伝えると、樹はきょとんとした。
「うん。おつかい。6年全員で、だってさ。珍しいよね」
「いつも1人から3人くらいだもんな」
もっとも、それはとても難易度が高い、ということなのだろうけど。
「1週間後らしいよ。作戦、練らなきゃね」
「作戦は練らなくてもどうにかなるしね」
「じゃあ、他の奴等呼んでくるか?」
「あ、僕呼んでこないよ」
「いってらっしーゃい」
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「へーすけ」
「樹先輩」
6年生の先輩が5年生の長屋に来るなんて、珍しい。何か用があるときくらいだろう。
「何か御用なのですか?」
用は無くても敬愛する先輩に会えて嬉しい、と思いつつ。
「ううん。ただね、明日おつかいをしない事になったから、またへーすけに委員会任せないことになるんだよ。いっつも任せないでごめんね?」
先輩、おつかいなのか…。
またしばらく会えないと思うと、少し悲しい。
「わかりました。樹先輩、頑張ってくださいね。委員会の事は任せといて下さい」
そう言うと、先輩は眉を少し下げてへにゃり、と笑った。
「へいすけは、本当に悪い子だねぇ」
先輩は俺の頭を柔らかく撫でて、お土産、買ってこないからね。と最後に言って去って行った。
5年にもなって、頭を撫でられるなんて屈辱かもしれない。
が、撫でるのが樹先輩なら嬉しい。
思わず頬が緩んで笑った。
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知ってますか?
悲劇とは、何処にでもあるものなのです。
この物語も、けっして例外ではないのです。
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