ハデス先生がやってきて、僕の生活は大げさではないけれど変わった、のだと思う。


病魔という、心の闇を餌にするモノ。

それを食らうことができる、ハデス先生。

そんな秘密を共有する仲間ができて、僕は毎日をそれなりに楽しく暮らせていた。

コンコン。


「失礼します。派出須先生はいらっしゃいますか?」


ガラリ、とドアが開く音がして、丁寧な声が聞こえた。


「女子!?」


女子の声に素早く反応する美作くんは相変わらずだ。

保健室の先生はあの通りなので、皆寄りたがらないはずなのに、珍しいな、にしても声に聞き覚えがあるような…。

と思って入室者の方をこそりと見る。


「…あれ、委員長じゃない?」

「ん?あ、ホントだ委員長じゃねえか」


入ってきたのは我等が2年A組の学級委員長、篠先さんだった。


「あら、明日葉君に美作君に藤君。お昼かしら。邪魔してごめんなさいね」

「いいえ全然!むしろようこそ!」


勢いよく近寄る美作くんに全く動じず、笑顔のままな委員長。

確かに、美作くんじゃなくても喜ぶぐらいの美人さんだなぁ、とは思う。


「…お客さんかい?」


突然ぬっと湧き出るようにして現れたハデス先生に、思わず驚いてびくっと肩が跳ねる。

まあまあ慣れたとはいえ、まだ突然現れられると驚いてしまう。こういう時に、藤くんの順応性はスゴいなと思う。


「あ、派出須先生ですか?
私は2年A組の篠先藤乃です。

今日は保健委員の代わりに石鹸の交代を手伝いに来ました」

「ああ、手伝いにきてくれたのかい…?それは助かるなぁ」


ハデス先生にも全く動じないいつも通りの委員長。


「さ、さすが委員長…」

「ハデス先生にも動じないとは…スゲェ」


いつも、誰にでも笑顔で優しくしっかり者で頼れる委員長がハデス先生の前でも健在とは驚くしかない。


「てか、ご苦労サマだな委員長も」

「お前はもっと働け。つーか見習え」

「ははは…」


いつも誰かを手伝って、嫌なことを率先してやってくれる、そんな委員長だからクラスメイトの中でも人気で、頼られている。

だから僕たちA組は委員長の言うことなら大体従う。

僕が言うのもなんだが、うちのクラスの委員長信頼具合は半端ない。






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