危機的状況に陥る
ぐるる、とお腹がなった。
4時間目が終わって、お昼休みである。全国の皆が一斉に休む頃合いである。多分。
私は今日、お弁当じゃない日なので、購買に行く。たまにはそんな日もあるのですよ。
早く行かないと色んな物が無くなってしまうので、ちょっと駆け足。
二年生のテリトリーは三階。加えては組は三組の中で一番購買に遠いのでそこんとこ、不平等だなーと思う。こういう時は。

購買に着くと、わらわらとたくさんの人がいた。
いつもこの時に最前列にいる、いけいけどんどーんな元気ありあまった先輩は今日も最前列だった。毎回思うが、三年生は四階なはずなのに一体どんな脚力してるのか、と思う。

「わ」

「うお」

ぼっけーと突っ立っていたら誰かとぶつかってしまった。時々あることだ。気を付けよう。

「すみませんでした」

「…お?」

ごめんなさいと共に軽く会釈して終了。そのまま何事もなくまた歩き出すかと思いきや、ぶつかった人は、わたしをじろじろと見始めた。わたしそんな有名人ではないのですが。
ぶつかった人はじろじろ、と観察してからにまりと、(うんこれはにまりだな。にこりじゃない)とした。

「もしかして、お前が兵助の彼女?」

どんぴしゃり。何故わかった。

「あーはい」

わたしが答えると、ますますにやにやとした笑みを深めるぶつかった人。
あ、この人よく見たら二年生で有名な…。
ふわ?かはちや?って人だ。
双子みたいにそっくりなので見分けれないとか。なのでわたしも分からんとです。
なんとなくそのはち?ふわ?な人を見て、用は無さげなのでさっさと去ることにした。昼食がわたしを待っている。

「それでは」

「ちょい待ち」

去ろうとしたわたしを、腕を掴むことで阻止したはちふわくん。ちょっとびっくり。

「なにか用?」

そう問うわたしに、はちふわくんはにこり、と笑って言った。今までにやにやだったから違和感を感じるなぁ。

「奢るから、一緒に昼食べようぜ」

咄嗟に頷いてしまったわたしは悪くない。お財布、ひいては家計のため。

ぴこぴこぴこ、と可愛らしい音は鳴らないけれど、そんな感じの擬音がついたらいいなあ、と思いながら携帯をいじいじ。

「ほら、名字さんの分」

「ありがとう」

わたしの手に渡った、美味しそうなパン達。
購買は大変混雑していたので、鉢屋くん(名前教えて貰った)がブツを買ってきてくれた。ありがたいです。
奢る、という言葉に釣られたわたしだけれど、本当に奢って貰えるとは。

「空き教室で食べようぜ。あそこ人居ないしな」

「はーい」

空き教室とか使ったことないよわたし。むしろ教室から出てご飯食べることもめったにしないし。冒険しない性格なのです。
道中鉢屋くんはたくさん話題を振ってきて、わたしはそれにうんだとかはいだとか聞いて無いのか聞いてるのかよくわからない簡素な相槌をうつ。
よく喋る人だなー。初対面の人なのに、こんなにも自然に次から次へと話題を運んでこれるのは一種の才能だと思う。
兵助くんとは大分違う。最近はそうでもないけど、最初は本当に静かで無言だった。お互い。兵助くんもきっとお喋りでもないし、わたしもそうベラベラ喋る方でないのが原因だろう。
それでも最近は、前よりも話すようになった。そんなに話が弾むわけじゃあないけど、以前よりは全然、話す。

「名字さん、」

呼ばれて、とん、と押されてバランスを崩した体が倒れていき、視界がひゅーっとスライドしていく。
大した衝撃もなく背中をつけたのは、下にマットがひいてあったからなのだけど、なぜ都合よくマットがあるのだろう。
ぱちり、ぱちり。
瞬きを二、三回繰り返す。
あれ、なんか鉢屋くんが上にいるんだけど、一体これはどんな状態、ってかうん、襲われてる?
うっわ、鉢屋くんすっごい悪い笑顔ですね。
え、なんで。



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