「アンタ、生意気なのよ!」


…なんだかとんでもない場面に遭遇してしまった。

追ってくる作兵衛に辟易して、左門と二手に別れて逃げたのはいいが、何故だかくのたま長屋らしきところに到着してしまった。

はやく誰かに見つかる前に逃げないと、と思った時に聞こえてきた声。

やっべえ死ぬ!と咄嗟に近くの茂みに隠れたのはナイス判断だったが、代わりに別の問題発生。

くのたまの虐めの現場に立ち会ってしまった。


「あんたこの前のテスト散々だったわよね。最下位だったじゃない」


一人のリーダー格らしきくのたまがそう言うと、回りの取り巻きがくすくす、と笑う。

…テンプレすぎて逆にびっくりした。

あるんだなー、こういう虐め。


「男に媚売ってる暇があったら、自分の頭どうにかしなさいよ。あっちもいい迷惑だわ」


なんか、逆に聞くとスゴい心配してるようにとれるんだけど、これが今はやりの………つ、つつる、つん…あれ、なんだっけ?七松先輩が言ってたんだけどな。


「じゃあ、次のテストは一位になるのよ。これでいいのかしら」


聞こえてきた虐められっ子の声が、一瞬誰だか分からなかった。

それはいつもよく、聞く声で、そしてどこで聞くかというと、作兵衛の、傍。


「はぁ?いきなり一位になれるわけないじゃない。何言ってるの?」

「なれるのよ。疑ってないで、まず結果を見ればいいのよ。文句ばっか言ってるのは滑稽なのよ?」


少し幼い喋り方。それは、確実に作兵衛のことが好きなで、よく傍にいるくのたまの声だったが、温度が、色が、全く違う。


「もういいのかしら?じゃあ、早くさようならをしたいのよ」


冷たい、暖かさの欠片もない冷えた声で、そう言うと、虐めっ子が憎々しげに言葉を吐き捨てて帰っていった。

こっそりと茂みから覗くと、名前は見たこともないような冷たい表情で、こちらを見ていて。

………。

こちらを、見ていて?



「ここは、くのたまの敷地なのだけど、そこは理解してるの?つ、つる、つぎ…」


「忍たまA」


覚えられてないようだった。





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