4
「アンタ、生意気なのよ!」
…なんだかとんでもない場面に遭遇してしまった。
追ってくる作兵衛に辟易して、左門と二手に別れて逃げたのはいいが、何故だかくのたま長屋らしきところに到着してしまった。
はやく誰かに見つかる前に逃げないと、と思った時に聞こえてきた声。
やっべえ死ぬ!と咄嗟に近くの茂みに隠れたのはナイス判断だったが、代わりに別の問題発生。
くのたまの虐めの現場に立ち会ってしまった。
「あんたこの前のテスト散々だったわよね。最下位だったじゃない」
一人のリーダー格らしきくのたまがそう言うと、回りの取り巻きがくすくす、と笑う。
…テンプレすぎて逆にびっくりした。
あるんだなー、こういう虐め。
「男に媚売ってる暇があったら、自分の頭どうにかしなさいよ。あっちもいい迷惑だわ」
なんか、逆に聞くとスゴい心配してるようにとれるんだけど、これが今はやりの………つ、つつる、つん…あれ、なんだっけ?七松先輩が言ってたんだけどな。
「じゃあ、次のテストは一位になるのよ。これでいいのかしら」
聞こえてきた虐められっ子の声が、一瞬誰だか分からなかった。
それはいつもよく、聞く声で、そしてどこで聞くかというと、作兵衛の、傍。
「はぁ?いきなり一位になれるわけないじゃない。何言ってるの?」
「なれるのよ。疑ってないで、まず結果を見ればいいのよ。文句ばっか言ってるのは滑稽なのよ?」
少し幼い喋り方。それは、確実に作兵衛のことが好きなで、よく傍にいるくのたまの声だったが、温度が、色が、全く違う。
「もういいのかしら?じゃあ、早くさようならをしたいのよ」
冷たい、暖かさの欠片もない冷えた声で、そう言うと、虐めっ子が憎々しげに言葉を吐き捨てて帰っていった。
こっそりと茂みから覗くと、名前は見たこともないような冷たい表情で、こちらを見ていて。
………。
こちらを、見ていて?
「ここは、くのたまの敷地なのだけど、そこは理解してるの?つ、つる、つぎ…」
「忍たまA」
覚えられてないようだった。
[4/6]
[*前] | [次#]