「すきです」




そう、言ったのはくのたまの同級生だった。

正直に言えば、最初本当かどうか疑った。

ついこの間に、くのたまの怖さを身に持って体験したばかりだったから、警戒を忘れられないのはしょうがないことだった。

しかし、目の前で柔らかい、そうまるで綿菓子のような笑顔で笑う可愛い女の子に告白されれば、嬉しいと思う感情があるのは仕方ないことだと思う。だってそれが男の性ってもんだろう。期待してしまうのもしょうがない。

少し浮わついた気分だったのもしょうがない。と、思う。

が、くのたまの続きの言葉を聞いて、一気に全身が冷えた。


「だからね、あたし以外の女の子に懸想したらその女の子をころすのよ。」


くのたまが手を少し動かしたかと思うと、サン、と風の音と共に隣になにかが刺さった音がした。

嫌な予感がしてちろりと壁を見ると、俺の顔のすれすれに棒手裏剣が刺さっていた。

…………。

棒手裏剣は深々と刺さっていて、大分力をいれないと抜けないだろう。

つぅ、と嫌な汗。

目の前のくのたまは、相変わらずにこにこと笑っている。


「すきだよ。富松くん」


そう言うくのたまの言葉と、表情と、行動。全てちぐはぐで。

…ヤバイ女に好かれてしまったかもしれない。

俺、死ぬかもしれねぇ。



───これが1年生の出来事だった。






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