「愛をちょうだい。それだけでいいの。他のは全部要らないから」

愛が欲しいわ。愛が欲しいの。

私は愛が欲しくて愛があれば他は何も要らないのよ。

だから愛をちょうだい。

他は要らないわ。

愛してくれればいいの。

それだけでいいから。


「兵助、愛して」





名前先輩は"愛して"とよく言う。

それが唯一無二であるかのように、"愛して、愛して"と言葉でも行動でもよく表す。

俺はそんな名前先輩の恋人な訳だが、名前先輩のことがいまいちわからなかった。

名前先輩は、愛してくれるなら誰でもいいんじゃないか?

そんな疑惑がふっと湧き出たのは、確か四年の終わり頃。

疑惑は、そこで終わらずにどんどん広がっていった。


"愛してくれるなら、他は何も要らないわ"


つまりは愛を与えれば、浮気しようが何しようがどうでも良い。

そういう事だろう?

それって、名前先輩は俺を本当に愛してるって訳じゃあないんじゃないか?

一度閃いた思考は止まらず、愕然とした絶望に似た感情に脳が支配されていく。



試しに、わざと名前先輩の前で他のくのたまと仲良くしてみた。

その夜名前先輩に会っても、いつもと変わらない。

ストン、と心の何処かが落ちた。

…もういいです。

あなたは俺を愛しているけどそれは代わりがきくものなのですね。
なら、俺は先輩を愛すのでそれ以外は求めないで下さい。



[1/8]

[*前] | [次#]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -