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どんよりと沈んだ気持ちで、ソファーに沈み込む。
いっそ、このままソファーに同化してしまえばいいのに。
そうしたら、余計なことも全部考えないで済む。

ガチャ

今、玄関のドアが開く音がした。
もしかして、パンティ?

「うおっ!?まだ起きてたのかよストッキング。電気ぐらいつけろよな」

…なんでコイツ、いつもより帰ってくるのが早いの。空気嫁ないなホント。

「るさいわね…。お兄ちゃんこそ帰ってくんの早いじゃない。何?とうとう女に見向きもされなくなったの?」

いつものように悪態を吐くものの、どうしても声を張れない。誰かと喋るのでさえ億劫なのだから、パンティにはさっさと退場してもらいたかった。

「それがよー聞けよストッキーン。今日はホンットツいてなかったんだわ。どいつもこいつも小便くせえテクニックでもう萎えまくり。やっぱ見た目がそこそこでも駄目なもんは駄目だな」

このヤリチンが、と言うかわりに、大きくため息を吐いた。

「アンタにお似合いの女ばっかで良かったじゃない…って何」

いつの間にかパンティが近づいてきて、上に跨がられた。何コイツ。実の妹に欲情したんじゃないでしょうね。
パンティの顔がどんどん近づいてくる。反応するのもメンドクサイ。ほっておこう。

こつん、と額が当たった。

「やっぱ、熱出てんな」

「はあ?熱…?」

じゃあなに、この身体がやけに重いのも、やたらネガティブ思考になるのも、熱?
…そういえば、風呂に入ってからろくに拭かずにこのまんまだったわね。思考から引き摺られてきて熱が出たのか。気づかなかった。

「お前いつもそうだもんな」

「…何が」

「お兄ちゃん呼びする時は大抵体調悪いじゃねーか、お前」

…そう、だっけ?
自覚無かったけれど、言われてみればそうかもしれない。死ぬ前は、お兄ちゃんって言ってたから。
パンティは、お兄ちゃんは、死ぬ前と随分変わった。何て言うか、もっとしっかりしていて、優しかった。それもこれもあんな環境だったから、と言えば今のパンティの自由奔放さは随分な皮肉だけれど。
変わってしまった、というより変われた、と言うべきなんだろう。少なくとも、今のパンティはあの頃より幸せそうだ。
今も昔も、パンティはお兄ちゃんなわけで。垣間見せる表情が、言動が、ふとした時昔のお兄ちゃんとダブる。

…そういう所が嫌い、と言ったらコレはツンデレになるのかしら。
でも、まあ、いいか。

「お兄ちゃん、一緒に寝て」

「なぁにストッキン欲情してんの?」

「馬鹿。誰がアンタなんかに」

たまにはデレてみるのも、悪くはないでしょう。
どんよりとした気持ちは、まだ晴れないけれど。
悪い夢は、見ないでよさそう。






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