>> 6
「よし暗くなった皆帰れー」
「話が終わった途端それ!?しかもまだそんな暗くねーし!」
本当にうぜえな八野郎は。雉も鳴かなきゃ撃たれないんだけど。
「と・に・か・く!今日はここで終いだ。姉ちゃんは記憶が無い。以上」
俺は半ば強引に話を終わらせた。いや、こうでもしないとこいつら動いてくれなさそうだし。
「このシスコンめ」
「黙れ豆腐野郎」
罵倒したら兵助は嬉しそうだった。キモいこいつ。豆腐ならいいのかよ。
ぶーぶー言う野郎共を強制的にぐいぐい玄関まで押しながら、未だにしょぼんしている三郎にだけ聞こえるように口を開く。
「姉ちゃんに手を出すな、よ?」
にこりと、真剣味を込めて言ってやったら、三郎はぷるぷると震え始めた。はっ。ざまーみろ。
まあ三郎が手を出すことなんて、あと百年もなきゃ駄目だろうけど。
バタンと扉を閉めて、ぎゃーぎゃー煩い声が扉越しに聞こえるようになる。
「…ふぅ」
「なになに、賢者タイム?」
とてとてと歩いてきた姉ちゃん。とその手に握られたネギ。こっちの気も知らないで呑気なこった。
「違うし。姉ちゃんもう立ち直ったのか?」
「え?なんのことかわからないな。何かあったかしら」
ホホホと笑う姉ちゃんは凄いわざとらしかった。
「で、どーよこれ。もー完璧衣装ミクちゃんでしょー。裁縫が得意な友人を持ってよかった」
得意ってレベルじゃねーぞそれ。いつも思うけどこういう服作れる人って凄いよな。どうやって作ってるのか皆目検討つかん。
「いーんじゃない」
「よっし、葵のお墨付き」
にかっと笑って俺の頭を撫でた後、姉ちゃんは台所に(恐らくネギを返しに)行った。
…はぁ。
幸せそうで、なにより。
prev//next