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「で、三郎もうフリーズとけた?」
姉ちゃんが現れてから、ずーっとフリーズしていたんだよなコイツ。いい加減直らないものか。この持病。
「ふふ、三郎ってば、いまだに駄目なんだねぇ」
可笑しそうに笑う雷蔵の顔がちょっと意地悪げに見えるのは、…錯覚じゃないだろーな。
「………べ、別に、ただ驚いただけだし」
うろうろと視線を動かして言っても全っ然、面白いだけなんだけどな。
「あ、そっか。三郎茜さんが気になって気になってしょうがないんだっけ」
「そうそう。何年経ってもさ、慣れなかったよねー」
「それでも会話ぐらいはできてたのにな」
「またふりだしだね。がんばれ、三郎」
い組二人が畳み掛ける。ナイスチームプレーだな。
三郎はどんどん挙動不審になって、落ち着かない様子。
いやはや、こんな三郎を見るのは珍しい。
いつも飄々としている三郎が、こんなにも弱体化するのは、この時だけだ。
あの時姉ちゃんと三郎がどんな話をしたのかは知らないけれど。
姉ちゃん関係では、三郎はこんな感じだ。
まぁ、だから嬉々としてからかうんだけどな。
「そ、その、本当に、茜さんは覚えてないのか?」
…あれー、その話題終わったんだけど。しつこいなコイツ。あ、いつもか。
「覚えてないよ。欠片たりともな」
まぁそれはそれで、オレにとっては好都合なとこもあるから良しなんだけど。
目に見えて沈む三郎。うっとうしっ。
「大体、覚えてるならあの格好で入ってきたとしても、『お!やっほー久しぶりじゃない皆の衆!』とか言って普通にずかずか入ってくるだろ、姉ちゃんは」
「確かに…」
「目に浮かぶね」
納得されるのもなんか複雑だが、昔の吹っ切れたあの姉ちゃんなら、そんな感じである。間違いない。
三郎がじめじめとして、部屋の隅っこでキノコ栽培に勤めているのが見えた。食えなさそうなものばっか量産しやがって。
とりあえず、説明も終わったし、とっとと帰って欲しい。切実に。
…早く暗くならないかなー。
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