>> 3
「へー。ここが葵の家か」
「ふつーだな!」
「こら、挨拶する。お邪魔します」
「お邪魔しちゃいますぅ」
「お邪魔します!」
「お邪魔します」
「お邪魔しまーす」
「…お邪魔されます」
さりげなく、玄関の靴をチェックする。
…姉ちゃん、帰ってきてるみたい、だな。
リビングのテレビついてないから、部屋か?
今の声が聞こえたなら、人見知りの姉ちゃんのことだから、不用意にこちらに来たりしないだろうけど…。
あーそわそわする。
でもこいつらには絶対悟らせないけど。
長年の苦労を泡にしてたまるか。
「…ここオレの部屋」
とりあえずこいつらを押し込めることに成功。
「お、PS3」
「よっしエロ本探すか」
「こら三郎!」
「勘ちゃん、明日数学どこだったっけ」
「P56からだよ」
…カオスだ。
八はPS3(無断で)やりだすわ、三郎はエロ本探しだすわ、い組は予習やりだすわ…。
人の部屋で勝手に寛ぎ始めやがった。
まともなのは雷蔵だけか。
ほんっと、こいつらなにしに来たんだよ。
まぁ、でもこれでやっと一息つけた。
姉ちゃんがオレの部屋入ってくることなんて、そうそう無いし。
それこそ万が一の確率だ。
「ねーねー葵!見て見てこれ次のイベントで着るコスなんだ、け、」
バァン!と扉が破壊されそうな勢いで開けられて、とってもテンションが高い様子で入ってきた、姉ちゃん。
みっくみーくにしーてあげるー♪と、どこからか聞こえてきそうな格好だった。髪は緑じゃないけど。
「………………」
5人は突然入ってきた人物を、全力でガン見。
「………………」
笑顔のまま固まってぴくりとも動かない、姉ちゃん。
重苦しい沈黙が、オレの部屋を満たす。
…オレの苦労!
先に硬直から回復し、沈黙を破ったのは姉ちゃんで、笑顔からすっと無表情になり退出していった。
「失礼しました」
パタン…と今度は扉を労るように閉められた。
「………………」
残ったのは、いまだに固まる5人と、ため息を吐くオレ。
…万が一、起こったよ。
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