06

「やぁ!お待たせしました!そして、お久しぶりでございます!
ボクはモノクマ!この学園の学園長なのです!」

颯爽と白黒のクマのぬいぐるみが登場した時の空気は、とてもじゃないがいいものではなかっただろう。

ドス黒いものを隠そうともしていないくせに、平気で道化を気取っている。
そんなあからさまに"怪しいです!"と全身で主張しているようなものに近づきたくはないだろう、誰だって。

「まずは…ヌルいよ、ヌル過ぎだよ!ヌルヌルだよっ!…えっ?ヌルヌルなの!?」

「やっぱり…あんたでちたか!でも、どうして…?どうして、モノクマがここにっ!?」

どうやらウサミ先生はこのシロクログマ…モノクマのことを知ってるみたいだ。動く人形ネットワーク繋がりか。どんな繋がりだよ。オカルトじゃないかそれ。

自分で自分をつっこみつつ、少し離れた位置で人形たちを傍観し続ける。
人形たちは愉快なのか不愉快なのかわからない会話の応酬から、喧嘩まで発展していく。

ウサミ先生の切り札であるマジカルステッキが奪われてから、一気にウサミ先生にとって不利な状況になったようで、ウサミ先生はモノミになってしまった。
なんだこの小芝居。

「おい…この小芝居はなんなんだよ…?」

かわりにつっこんでくれた九頭龍、よくやった。
全員がそれぞれのつっこみをして、(ちなみに私は"つまんなっ"とだけ言っておいた。主にこの小芝居に対して)モノクマの演説が始まった。

――その時のことは、少し、いや大分冷静ではなかったので、心境は省いておく。恥ずかしいので。
モノクマが言ったことをまとめるに、

1.私たち全員で、"コロシアイ修学旅行"を始める。

2.名の通り、始めるのは殺し合いである。

3.島から出るには、人を殺さなければならない。

4.殺人が起きたら、"学級裁判"で犯人をつきとめる。

5.殺人を犯したクロを当てることができたら残った面子で修学旅行続行、当てれなければクロだけが生き延びあとはおしおき。


…バカげている。

本当に、悪趣味にもほどがある。
当然のように反抗した私たちに、モノケモノとかいう兵器を突きつけて、モノクマは去っていった。

後に残ったのは、盛大に混乱した私たちだけで。


「今の俺達が一番警戒すべきなのは…

…ここにいる俺達自身の方だ」


そう、十神の言う通りだった。

モノクマも、モノケモノも、直接的な被害にはなりえない。…こちらが手を上げない限りは、だが。

しかし、今日知り合ったばかりの人間に、植え付けられた恐怖。

"誰かが殺すかもしれない"
"自分が殺してしまうかもしれない"

そんな疑心暗鬼を抱いてしまったからには、警戒せざるを得ない。

私達は自然と回りの人間の顔を見た。
確かめるように、疑うように。
信用できるか、信頼できないか。

今の話が嘘だと思いたくても、皆"もしかして"という気持ちは消えていないようだった。

…これは拙いなあ。








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