01
「ねぇ……」
うるさいなー、人が気持ち良く寝てるっていうのに。
「聞こえる…?」
はいはい聞こえてます聞こえてます。だから寝させて。
「ねぇ、大丈夫?」
人様の快適な睡眠の邪魔をするのは悪だと思うんだけど。
「…大分参ってるみたいだね?」
お前にな。
「それはボクも…ううん、他のみんなだって一緒だよ」
他の、皆?
気になる言葉に、眠気にさらわれそうだった意識がむくりと少しだけ起きる。
そういえば、この人、誰だ。
「だって、いきなり…こんなおかしな事に巻き込まれるなんて…」
視界に広がっていたのは、男の人。いや、まだ成人はしていないぐらいだろうか。
そうして男の人の背後にある、隠しきれない風景に、私は釘付けになった。
青い空、白い砂浜。綺麗な海。
いかにも南国です!という雰囲気をあらわにしているその光景に、私の頭はくらくらとする。
そして、唐突にぼんやりとその記憶は私の脳内に入り込んできた。
日向はじめ。扉。超高校級。教室。ウサミ。修学旅行。アイランド。らーぶらーぶ。才能。憧れ。希望ヶ峰学園。己に恥じない人間。そのためにずっと、私は、私はずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと…。
「ねぇ、聞いてる?」
………あ、聞いてなかった。
一気に情報が押し込められたため、少し混乱してしまっていた。
「ねぇ、本当に大丈夫?」
「…うーん」
どうやら私は、日向はじめという人間の体に入ってしまったようだった。
…やばい。さっぱり意味わからない。