女子会
「海水浴?」
「ええ!女子の親睦を深めようの会です。ドッロドロでネッチョリした友情を築くのです!」
「もう少し粘性のない友情が欲しいかな私」
そんなわけで。
女子の交流を深めよう、ということで、皆で海に行ってきゃっきゃうふふすることになった。
私としては大歓迎で、もう一も二もなく頷いたものだ。交流万歳。
スクール水着じゃない皆が見れるんだぞ?楽しみすぎるだろ。
これぞ女子の特権。ヤローでは入れない空気・空間・雰囲気というものがあるのだよ女子には。
「で、なんでお前がいるの?」
「よ、よう日向!」
左右田がいた。
ご飯をそこで済ましてしまおうと、一足先に向かったら、なんかいた。
「こんなところでバッタリ会うなんて奇遇だな!」
白々しい。
分かりやすいな、こいつ…。
「つまり、女子同士で海で遊ぶということを聞き付けたから、こっそり覗きにきた、と」
「なななんで知ってるんだ!?」
図星かよ。
カマかけただけなんだけどな。見事正解してしまった。どんぴしゃり。
というかよくこいつ一人で来たな。そういうことは一人でできないタイプだと思ったんだけど。
他のやつらとか誘えば――そこまで考えて、男子の面子を思い出した。
まず狛枝×。論外すぎる。九頭龍も×。のってくれるわけがない。
判断していったら、あっという間に全員に×がついていた。そりゃあ一人で来るしかないわけだ。
「そ、それより、泳ぐなら水着はどうしたんだよ!あそこで着替えるのは禁止だろ?」
私のじとーっとした目に耐えきれなくなったのか、慌てて話題転換する左右田。
こいつは本当、見た目派手なのに妙に小心者だな。
勿論、着替えを忘れたとかアホな真似をしでかしたりしてない。
「下に着てきた」
中学でも、1時間目とかが水泳だったりしたら中に水着きて登校したなーという思い出。
昼から水泳だと、主にトイレの時に困るんだよなー。できないわけじゃないけど面倒臭い。
「がっかりだよ日向!お前は男のロマンというのをわかってねー!!」
「わかってたまるか」
私は女だっつの。お前は何を期待しているんだ。
「つか、早くね?まだ時間全然あるじゃん」
だからなぜお前が集合時間まで知ってるのかと。
自分で墓穴掘りまくってる左右田にもう笑う気も突っ込む気も起きない。
「ここでご飯食べようかと思って」
「メシってもう昼大分過ぎてるぜ?メシって言うよりおやつの時間だろ」
「気づいたらこんな時間になってたんだよばーろー。で、同席してもいい?」
「おういいぜー」
気の良い奴ってことはわかるんだけどな。いかんせん、小者臭が凄まじいのが難点か…。
遅い昼御飯をもふもふ楽しんで、食後の緑茶をすすっていると、窓の外を見ていた左右田があれ、と声をあげた。
「あいつって…」
なんだなんだとつられて窓の方を向けば、そこには珍しい人物が。
「なにしてんだろうな?左右田、ちょっと行ってくる」
「え、ちょ待てよ置いてくなよ!」
立ち上がって外へ行くと、なぜか左右田もついてきた。いやなんでだ。
置いてかれるのが怖いってまだ昼だぞ?おばけでないぞ?
…今、私が左右田のことをどう思ってるかが露見してしまったような気がする。
「テ、テメーら!」
「うっす。やっぱ九頭龍であってたな。どうした?こんなところで」
「そ、それはこっちのセリフだッ!」
ん?と眉をひそめる。
台詞的には、いつものつっけんどんな九頭龍に違いない…が、なにをこんなに焦っているのか。
とにかく余裕がない。"なにか"あったのだろうか。
「なんだよ…なにをピリピリつーか…慌ててんだ?」
さすがに左右田もそれを感じたようだ。
やっぱ変だよな。
「だ、誰が慌ててんだよッ!?妙な言いがかりつけてんじゃねーぞ、コラァ!」
さてはこいつ、嘘吐くの下手だな。前にも思った覚えがあるが。
こんなに動揺してて隠せるわけがない。
そう、よっぽどの馬鹿相手でない限り。
「さては…あれか?オレの作戦を聞き付けやがったな」
……………。
そうだ、よっぽどの馬鹿ならここにいたんだった…。
作戦ってあれか?あのガッタガタにも程がある、女子の親睦会に参加しちゃおう作戦か?
フツーに考えて九頭龍がそんなのに参加するわけないだろうよ。馬鹿なの死ぬの?
あー…。なんか、コイツの馬鹿さ加減には肩の力抜かすわー。
「おーい、そんなトコでなにしてんすかー!?なんか珍しい組み合わせてっすね!」
「こ、こんにちはぁ!えっと本日はお日柄も良くて…その…
ここであったが百年目!」
怖いよ罪木。