自主的引きこもりライフ
海軍本部、マリンフォード。
一般人はみだりに出入りすることのできない場所に私がこうして居られるのは、私が天竜人でお偉いさんだからだ。
無駄なことに海軍本部大将を呼びつけたりする父は、無駄に心配性で、自分達が出かけて私が一人きりになる時はその無駄な権力を使って私を海軍本部に預けるのだ。
…全くもって、迷惑な話だ。
そもそも私をついてこさせないのも過保護の表れなのだが、一体どこでなにを仕出かしているのやら分かりやしない。天竜人として積み上げられ凝りに固まった頭は、ロクでもないことにしか使われないだろう。
遠出の度に私を預けるのは止めてほしい。いい迷惑なのだ、私も海軍の方達も。
そう、海軍だって嫌なのだ。天竜人がいるのは。
天竜人からの命令であれば、どんな無茶も罷り通ってしまう。
言い換えれば、海軍は私達のどんな要請にも応えなくてはならない。誰でも天竜人の好き勝手ぶりは噂に聞いているだろう。
あまり外へ出たことのない私だが、どうやらこの世界、天竜人を好いてる人など滅多にいないようなのだ。
まあ確かに、絶対王政なみの理不尽を強いている天竜人に覚えるのは、反感や恐怖や憎しみだけだろう。プラスの感情が誘発されることはない。
何故、そのような"勝手"が、天竜人には許されているのか。
天竜人は、偉いだけだ。特に能力があるわけでも、有能なわけでもない。言ってしまえばクズの集まりだ。ただのお飾りだ。
実質世界を管理しているのは海軍なのに、その海軍を下らない用事で呼んだりする私達は、かなり鬱陶しい存在だと思うのだ。
それこそ、必要ないんじゃって思うほど。
だのに私達を一々守り続けるわけは?権力を持たせておくわけは?
…考えても栓無い。ただ、こうもやることがないと考え事くらいしかやることがないのだ。
海軍本部に来た私は、与えられた部屋に引きこもっていた。
わざわざ出歩いて海軍の人の気を散らすこともないだろうと、配慮したためである。
ぶっちゃけると、暇なのだ。
ここに来ると引きこもり生活になるので、そりゃまあいつも引きこもりみたいなものだが、自分の家を散策くらいしてるわけで。
…暇だ。
「ホノ、辺りに人がいない所を散歩できますか?」
「……」
気分転換も大切だと思う。
ホノは気配とかに敏感みたいで、誰かいないとかいるとかわかるのだ。凄いのだ。
コクリと頷いたホノに案内してもらうことにして、私は部屋から出た。
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