一狩り行こうぜ!


「おそよう王様。後で一緒に一狩行こうぜ」

眠そうに重役出勤してきた王様はうむ、とふてぶてしく頷いて、ふらふらと台所方面へ行った。
全く寝汚い王様だ。何時だと思ってるんだ今。人のこと言えませんねすみません。

大分現代に慣れてきたよな王様も。これで偉大な英霊様なのだから、びっくりって所じゃない。不思議と涙を誘うのはなんでだろう。


始めてここに来た時から感じていた優雅な雰囲気に気圧されつつ、自分の部屋への道へ向かう。
てかここ電化製品無さすぎだろ。トースターぐらい置いとこうよ。この科学満ち溢れた時代から進んで逆行することないのに。魔術師って不思議。
寧ろ今では王様の方が機械の扱いに慣れてきたぞ。王様の順能力ぱないの。

そういや今日新しいパック出るんだよな。あんま興味ない内容だったからうっかり忘れてた。とりあえず一箱ぐらいは買っとこう。

「綺礼ー、きれいきれいー」

綺礼はどこだ。いるはずなんだけどな、この時間帯なら。
何か知らんけど真面目だからな、あいつ。我が師我が師と甲斐甲斐しくてご苦労なことだ。

「……美令か」

あ、いた。
相変わらずの仏頂面である。
そこに、若干うわ、来た…みたいな嫌がってる様子が透けて見える。分かりにくいが、これも長年の付き合いというやつなのである程度はこいつの表情は分かる。

「いやあちょっとお願いがあってだね」

「断る」

だが断る。ってかい。速いよ速い。即断過ぎる。私が何を言っても断ってたんじゃないか、ってぐらい返事が速い。

「つれないこと言わないでよー。どーせ外出るんだからついででしょ?」

私が頼むことといえば、ほぼおつかい一択である。
何々買ってきてーとお願いしまくってきたので、最早本題に突入しなくとも内容が分かるというね。引きこもり?いやー聞こえないなー。

「通販で買えばよいだろう」

「だって通販だったら二日ぐらい待たなきゃいけないじゃん」

「たまには外出しろ」

「やだよ忙しいもん。パッと行ってパッと買ってきてよきれい。ねーねー」

ねーねーと綺礼にしつこく食い下がる。服の裾を引っ張るというオプション付きで。
そうすれば、綺礼は段々と仕方がない、とでもいうような表情になった。よっしゃ。
駄々を捏ねるように食い下がれば、結局最後には渋々と折れてくれるのを知っているので、ぐちぐちと綺礼に絡む。

「…仕方ないな。何が入り用だ」

やっぱりね。綺礼はなんだかんだで私の我が儘を聞いてくれるので好きだ。
ただし度が過ぎると駄目だが。そこら辺の引き際を見極めるのが大切だ。

「やった!ありがとう綺礼おにーちゃん!」

冗談めかして抱き付くと、べりっと引き剥がされる。あぁんひどい…。
でも"おにーちゃん"はねーな。何でおにーちゃんなんだ。自分で言ってて鳥肌たったわ。
ふんふふーんと上機嫌に買って欲しい物のメモとお金を渡していると、ふと綺礼が表情を引き締めたのでなんだなんだと首を傾げる。

「美令、あまりギルガメッシュに余計なことを教えるな」

ぱちぱちと目を瞬かせる。

「余計なことってー?」

んー?と惚けるようにすれば、綺礼はたしなめるような視線を寄越した。

「この前、奴が『マスターソードとやらはどこにある?』といって師を困らせていた」

「ぶふっ!!」

…あちゃー。そりゃ時臣さん困るわ。

マスターソードなんて知らないだろうし。
さぞハテナが頭に一杯浮かんでいたことだろう。御愁傷様です。

「わ、わかった。ちゃんと言っとく」

このゲームはフィクションです。
しっかり言うべきだったな…。いやでもまさか、現実でもあると思ってるとは。
まあ王様の存在事態がファンタジーだからな。いつか賢者の石とか探し始めるんじゃないだろうな。帝王(笑)になるのかギル様や。

「太古の王とはいえ、奴はサーヴァントだ。あまり情を移すなよ」

殊更念を押すようにして、綺礼は言った。
…全く、頭が固い魔術師を師と仰いでるからそんなんになっちゃうんだよ綺礼はさ。

「いーじゃん別に。無駄な情を移すような私じゃないのは知ってるでしょ。楽しいことは全力で楽しむべし、面白きこともなき世を面白く。これが私の信条です」

そう言えば、綺礼はなんだか変な顔をした。まるで同じようなことを誰かに言われたみたいな。お前もか、ブルータスみたいな。悲壮感は漂ってないけど。

「それに、ただでさえふらふらしてる王様を留めておけるんだからいいじゃん」

ゲームは家でやるものですから。順調にヒッキーへの道を辿っているぜ王様は。あ、今度王様誘ってターミナルやりに行こうかな。
前に時臣さんに、どうにかこの時間帯に王様を家に居させることはできないか、という相談を私が承ったことがある。
その時はなんで?と思いつつも、いつものように王様とマリパして遊んで引き留めてみたら、大層感謝された。
それ以来、私は王様の遊び相手みたいな役割に落ち着いている。
私的には遊び相手増えて嬉しいけどさ。ゲームに嵌まってる王様ってどうなんだろう。
こうなったらいっそ、ガチオタになるまで染めてみるか?ちょっと楽しそう。

「…そうだな」

ちょっと納得いかない、というような仏頂面をした綺礼。口数が少ないんだから全く。もっと綺礼は言いたいことベラベラ喋っていいと思うの。

「じゃあよろしくお願いねー」

でもそれは私が言ってどうにかすることでもないから、笑いかけて、今度こそ部屋へ戻るべく歩き出す。



よし、狩りの時間だ。










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