ぎゅ、



夕暮れは逢魔が時。
怪異に引き込まれやすい時間帯。





もうとっくに空は真っ赤で、太陽はもう少しで完全に沈みそうな時。
真っ赤に染まった公園で、少女はベンチに座っていた。
夕焼けに赤く照らされながら、少女は帰る様子もなく座り続けている。

――もう、とっくに帰らなきゃいけない時間は過ぎてるのだけど。

少女は、少し困っていた。

少女の母親は、夕焼け小やけの音楽が鳴ったら帰ってきなさいと言った。
もう音楽は鳴り止んで、大分たってしまっている。

それでも少女が帰らないのは、帰れないのは、引き留める存在がいたから。
ベンチに座っているのは、少女だけ。
だが、夕焼けに照らされる影は二つ。

少女の隣に、一人。
目に見えない誰かが、そこに座っていた。

(――どうしよう)

ぎゅ、と痣になりそうなくらい力強く握られている手首。

(早く、かえらなきゃ。おかあさん、おこってるかなあ)

少女には到底振りほどくことができない強さで握られるそれは、離す気配を見せない。

もとより、少女にその手を無理矢理離そうという気はなかった。
ソレはただ、少女に一緒にいてほしいだけなのだから。

ひとりぼっちで、寂しくて。

誰にも気付いて貰えないソレに話しかけたのは、少女だった。
あまりにも寂しそうだったから、大丈夫?と近寄った。
日が暮れてそろそろ帰らなきゃ、と少女が言った時、ソレは少女を帰さまい、と必死にその細い手首を握ったのだ。
故に、少女からどうこうしようという意志はない。
ただ、ソレが諦めてくれて離してくれる時を待つだけだ。

(―――、え)

その時、少女は近付いてくる"何か"を感じ取った。
力強い、強固にして強靭な意志。
普段少女が見ている薄くてぼんやりとしたものとはまるで桁違いの、濃密な密度の気配。
どんどん近付いてくるのがはっきりわかる、わかってしまうくらい大きな強い存在。
それを少女は呆然とした様子で、ただそれが近付いてくるのを待っていた。


そして、少女は金色と出遭った。











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