ぴたぴた


―――眞乃ちゃん。どうしたの?ほら、行きましょう

―――おかあさん、あれ、

―――なあに?ああ、花束が供えてあるのね。お祈りしましょうね

―――まっか

―――ええ、赤い綺麗なお花ね


その時わたしが見ていたのは、おなかからあかいものがどろどろあふれている女の子だったけど、わたしは口をつぐんでおかあさんといっしょにお祈りをした。

ポーンポーンとはねるのは、頭。にやりとこちらをわらって見てる。
視界のはしっこにまとわりつく影。目をつぶっても、じいっとこちらを見てる。
男の子がさがすのはなくなった右目。てつだって、と電車のみちでてまねきしてる。

わたしが見ているせかいはいつもそうで。
さびしくて、つらくて、くるしくて、かなしくて、にくらしくて、いとおしくて、ころしたくて、なにかをひたすら想いつづけてそれだけになってしまったモノたちが、いる。
わたしは、それがあたりまえだって思っていた。
みんな、たくさんのコレを見ているものだと思っていた。

おかしいな、と思ったのはいつだったろうか。
あんなにさみしそうに泣いてる子がいるのに、なんでだれもなにもしないんだろう。
かくれんぼで一人だけ見つけてもらえない子がいるのは、なんでだろう。
ふしぎに思っても、わたしは口にはださないで、ただじっとそれを見つめるだけだった。

言ったら、だめな気がした。

なんで?ってきいたら、だめになる。
わたしは本能的に、かんじとっていた。

わたしが、おかしい。

わたしが、変なのだと。

頭がはんぶんしかないおねえさんも、黒い手も、ゆらめく白いものも、みんなには見えてないのだと。

だからわたしは、口をつぐんだ。

だまって、さみしくでかなしいソレらと遊んだ。

おかあさんもおとうさんもおにいちゃんも、ひろしくんもえみちゃんもみーちゃんもかずくんも、みんなわたしのことをおかしいと言うだろうから。










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