九人

「あっ!いたいた!おーい!」

富松発見ハァハァ。
おっと、これじゃあわたしが変態みたいじゃないかね。
もっと淑女らしく…見つけましたわ、富松様!…こんな感じか。

「…ウタ先輩!?」

逃げたそうな顔な富松は最近のデフォルトです。
…言っててしにたくなってきた。
目をうろうろさせて挙動不審な富松を逃がさないために腕をがっしりと握りしめる。

名付けて力尽く大作戦。

つまり、二年という学年の差を利用した経験の違いにより、抵抗できないようにする作戦である。我ながら最低だ。
だから最終手段にしたかったんだって。富松に嫌われたくないんだって。

「あのね、」

「………」

目を合わせてくれない富松。泣いていいですかわたし。

「最近さ、」

「!」

びくり、と震える富松に興奮する。性的な意、





ブオオォォン、と飛んできたソレを避けるため、わたしは反射的に富松を抱えてその場から退いた。

プリンセスフォールドとかやってみたかったけど、そんな暇も余裕もない。なぜなら、

「…チッ」

心の余裕がないからだ。苛立ちでな。

盛大な舌打ちの音。
学園広しといえども、わたしにこんな態度をとるやつはただ一人である。

「…クソが」

ぼそりと(思わず)呟いた声が、近くの富松には聞こえてしまったらしく、脅えたように体を揺らした。
この野郎、富松を脅えさせやがって。
脅える富松も可愛いがそれにコイツが関係しているとなればイラっとする。

「危ないから、下がってて」

ゆらり、とソイツの方へ体を向ける。

前々からずーっと思ってたが、コイツマジうっぜえ。
よりにもよって富松と会ってる時を邪魔するなんて、…万死に値する。

今日こそ潰す。
その無駄すぎるお綺麗な顔をボッコボコにして泣いて土下座させるのが夢なんだよわたしの。

生意気にもこっちを睨み付ける目を睨み返す。見てんじゃねえぞごらぁ。富松とは今日一回も目が合ってないのに。

…ああもう駄目だこの悲しみを苛立ちに転化してコイツにぶつけるしかない。そうだ。そうしよう。
ストレスはお肌に悪いっていうし、仕方ない仕方ない。


覚悟しろや、穴掘り糞小僧。





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