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「ねむい…」

『めーしょんぼりーしてますー』

「ケイ顔拭く?タオル濡らしてきたけど」

「…つかう。ありがと…」

ねむい。すごくねむい。油断すれば今にでも寝オチしてしまいそうなくらいだ。ふらふらする。

「駄目だ!寝たら死ぬぞ!」

『ぽっくりー』

「はー…」

一城達のボケに付き合ってる余裕もない。
ねむい。ひたすらにねむい。なんというか、眠いときというのは余裕がない。
頭の中では色々考えているのだが、それが行動と一致しないというか。起きてすぐ傘を持っていこうと思ったのに、出かけた後傘を持っていなかったり。ようは、寝惚けているということなのだけど。

『スピードやりましょー』

「にーやんとやって…」

『振られたーしょんぼりですー』

「よしよーし。しーくん、お兄さんと速さ競いあおうか」

『わあい』

会話から察する通り、私のこの寝不足の原因は遊びまくってたから、である。

もちろん、遊びとはトランプゲーム。

布団に潜り込んだ後、後ろで一城がしーくんにババ抜きのやり方を教えながら楽しそうに遊んでるのを聞いていたら、なんだかうずうずしてきて。

やりたい。すっごくやりたい。

そんな風に思ってしまった時点で、眠気なんて覚めてしまうわけで。
トランプゲームで大いに一晩をエンジョイしてしまった私は、当然ながら寝不足になってしまったのだった。仕方ないね。

ちなみに昼寝をバッチリした一城さんとしーくんはこの通り余裕そうである。ちくしょうめ。

「あーもう、眠い…眠い…」

「昼寝するかい?」

『僕もしたいですー』

「やだ。昼寝たら夜寝れなくなるし。しーくんも寝すぎはよくないよ」

『ちぇー』

しーくんの無表情でちぇーとか可愛い。こんな愛想ないプリンそういないだろうな。

「じゃあ少しでも目が覚めるように紅茶でも入れてくるよ。しーくんはなにがいい?」

『ココアー』

「うおぁー…」

「入れてくる間寝ないように」

「…うっす」

そう言って一城は私の頭を軽く撫で、部屋を出ていった。

一城の頼もしさ異常。人型になってるのは私の世話をやいてくれるためだったのか、なんて。
あれでイケメンなのに変態なんだよな…いやあ、世の中って不思議。

「ケイー」

ぎゅう、と抱きつかれる感覚。

「しーくん?」

あら珍しい。人型のしーくんだ。
しーくんは原型の方が好きなのか、めったに人型をとらない。まあ、元々の姿の方が落ち着くってのが普通だろうけど。

プリンの姿よりも、広範囲から伝わる暖かさ。おいおい眠くなるだろ。心地好いぞこのやろー。

「僕はー、わりと好きですー」

「へ?」

なにが?お菓子が?

思わずきょとんとしてしまう。

しーくんと私の身長差はほとんどないと言っても過言ではないので、抱き締められているとも抱きつかれてるともいえない中途半端な具合である。
仮にも妙齢の男女が抱き合っているといのに色っぺー雰囲気が一切無いしーくんクオリティ。まあ相手が私というのもあるけど。

「ケイは、好きですかー?」

しーくんはそう言って私の顔を覗き込んできた。
かわいいなあ。
私のこと、気遣ってくれてるのかもしれない。多分だけど。
普段何を考えているかよく分からないしーくんなだけに、嬉しかったり。

「好き、になれるかも、うん」

はぐらかしたり、あやふやにしたくなかったので、なるべく近い言葉にしてみる。
多分、きっと。っていう言葉が好きな私だが、それは使用せず。

「ピピー!しーくんセクハラー。イエローカード一枚」

飲み物がのったお盆をもった一城が乱入してきた。口でピピーて。口笛でもないし。

「ココアー」

イエローカードを貰ったしーくんは一城の持つココアを見るとさっさと離れていった。急に温もりがなくなって寂しいぜ…。

「ケイ。はい紅茶」

濃い目に入れといたから、と渡される。

「ありがとう一城」

ちびりと口に含む。
丁度いい熱さだったので、安心して飲み始めることができた。

しーくんの方を見れば、嬉しそうにココアを飲むしーくん。かわいいなあ。無表情だけど。

隣に腰掛けた一城は紅茶を飲んでいて、私と目が合うと、にこりと笑って頭を撫でてきた。ううむ、完全に子供扱い。

気付けばまだ少し眠いものの、最初みたいな強烈な眠気はなくて。


これは、


「幸せかも、しれない」








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