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『さっき誰かと話してた?』
所変わってここはポケモンセンター。
あの変態みたいなお兄さんとやっとの思いで別れ、(別れ際に、「また会おうねー!」と言っていたが華麗にスルーさせて頂いた)私は、さっさとポケセンへ行き一城としーくんを回復してもらい部屋をとった。
やっと一息つけた時、回復し終えた一城にそう聞かれた。
「あれ、聞いてなかった?」
ボールにいるからって外の状況がわからないというわけではなかったはずだけど。
『いや、寝てたからさ。うっすらと誰かと話してるなーという気配しか感じなかった』
ふて寝か。昼寝とか羨ましい。私もぐっすり寝たい。
「いやなんかね、ギンガ団とかいう人に絡まれてた」
アホっぽかったけど。
『…ケイ、あまり変なことに首つっこんだら駄目だよ?』
割りと真剣な顔をした一城に、そう怒られてしまったら、文句なんてとてもじゃないが言えやしない。
うん、確かに、不注意だったかも。
たまたまアレな人だったから良いものの、チンピラみたいに因縁つけてくる人だったら厄介なことになる。
「うん。気をつける」
今度から、と心の中で付け足しながら。
『目が、目がー』
「どうした大佐!」
いきなりボールから出てきて会話に割って入ってきたしーくん。
どうしたしーくん。
『目が、冴え渡っていますー』
ほらほら、と見せつけるようにずずいっと寄ってくる。
その目を見ると、心なしか…うんちょっといつものしーくんよりも目が生き生きとしている気がした。気がしただけで実際どう違ってるかわからん。しいて言うならちょいテンション高い。
「昼寝たくさんしてたからね」
移動中ずっとだから、かなり寝てたことになるよな。最早夜行性並みじゃん。
『夜眠れないぐらい昼寝したら駄目だろしーくん』
『ごめんなさいー』
一城にーやんの指導が入っていた。一城マジにーやん。
「私はたくさん歩いてへとへとなんだけどなー」
一番動いてるの実質私だろ。基礎体力が違うとはいえ。
この二人も、私が運んだようなものだし。
『えー?』
暗に寝かせろという意味を含ませた私に、遊びたい、とでもいうような視線が向けられる。
くっ…!私がこの視線に弱いと知った上での行動かっ…!
『こらこらしーくん。ケイは疲れてるんだからあんまり困らせちゃいけないよ』
『…はーい』
素直にそう返事するしーくんのは相変わらず分かりにくい無表情だが、ちょっと残念そうにしたのをこの私が見逃すわけない。
そうなれば、このまましーくんに暇思いをさせるのも忍びないな、という気がしてきて。
あ、そうだ。
「昼寝たっぷりして目が冴え渡っている、そんな君たちにオススメの商品!
ちゃらららっちゃらートーラーンープー」
某狸みたいな猫型ロボットにあやからせてもらった。
『おお、その紙っ切れは噂の』
『なんですかー?』
噂になってるのかこれ。
「そう、トランプです。奇術師が使えばこれで人をも切り裂くことができるという。しかーし普通に使えば色んな遊びができ、暇潰しに最適なものでございます」
七並べ、ババ抜き、スピード、ポーカー、大富豪、ブラックジャックなど、多彩なゲームで遊べるこのトランプは本当に凄い代物である。
なんで持ってたかというと、最初からポケットに入っていた。友人と遊ぶ時トランプを用意するのは私の役目だった。
「これで遊べば大分時間潰せるから、どうぞ遊んでくださいまし」
トランプを一城達にポイッと投げ渡すと、さっさと布団にくるまって寝た。
「おやすみ」
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