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「―――で、コロネちゃんまじツンデレなんよ。超めんこいツンデレ万歳」

「へー」

かれこれどんくらい時間が経ったのか。
ぺらぺらと喋りだしたこの男の勢いはとどまることを知らず、愚痴から始まり今は手持ちの自慢まで発展していた。

正直に言おう。

ちょーだるい。

お前は大好きグラブ会長か、ってくらい長々と話されて私の精神は磨耗してしまっていた。
相槌なんてさっきから「へーほーへー」しか言ってないのに続けられるっていうね。おばさんか。井戸端会議をするおばさんか。

「グアムくん超cool。俺たちがやれないことを平然とやってのける。そこに痺れる憧れる」

「ほー」

ちなみにこれまで流し流し聞いていた話によると、コロネちゃんというのはニャルマーで、グアムくんというのはグレッグルらしい。
見事に上から支給されたポケモンだった。

しかし彼はギンガ団縛りとやらを実行中だそうで、このメンツでどんだけやっていけるか挑戦中らしい。育成大好きらしかった。
ギンガ団結構楽しんでね?と思ったのは胸に閉まっておく。

というかな、さっきからベラベラ喋っているが私だって自分の手持ちの自慢したい。ずるい。

「…はーひっさしぶりにこんな喋ったわー。やっぱ愚痴れる環境ってのは必要だな」

スッキリとした顔の男。対する私はぐったりしていた。

「ギンガ団ってそんなに酷いとこなの…?」

こんな男がやっていけるんだから同じような人がたくさんいるものかと思ったが、それは違うような口振りだし。

「んー?酷いも何も、な。したっぱは雇用条件無いにも等しいから大抵何処にも行けなかったクズみたいな奴ばっかだし、幹部は幹部で盲目的だし、お綺麗なものが好きな奴には最悪の職場環境じゃねーか?」

そう、頬をかいて照れ臭そうに笑う男の仕草が実に内容とミスマッチなんだが。
そんな気軽い雰囲気の団体ではなさそうだけどそこんとこどうなの。

「はーそれはそれは。御愁傷様です」

まあ私には関係ないのだが。
どうせ、私が関わらずとも主人公くんとか彼女が勝手に関わってどうにかするだろう。

「別に嫌ってわけじゃないんだけどな、文句ぐらい愚痴ったっていいだろうよ」

クズい人ばかり、というのはこの人もその括りに入れていいのだろうか。口振りだと自分もそういう人間だ、という感じだったが。ううむ。

「お兄さん、ちなみにお名前は?」

よくわからない好奇心が働いた。
多分、こんな怪しい男相手になんて、あんまり褒められた行為ではないだろうけど。

私は、この人と関わってみたいと。

そう、思った。


「――うわ、ナンパされちゃった。これが噂の逆ナンってやつかー」

「さようならお兄さん」

すでに緩んでいた手を振り払って、さっさと踵を返す。さて、ポケセンはどこかなー。

「ちょ、待って待って!ごめんなさい調子のりました!」

再び腕をガッシイと掴まれ、止まることを余儀なくされる私。



「キリコ!キリコっつーの俺!」



必死に名乗る男――キリコ…さん。
画家?それとも変身できる動物なの?どうなの?

「ケイです。覚えるな」

「命令かよ!ひっど!けど覚えたからな、ケイちゃんケイちゃんケイちゃん…」

「気持ち悪い…」

「本気で嫌がるのやめて!」

ごめんて!と謝るキリコ…さん。

そろそろ、っていうか最初からだけどキリコさんのせいで、周りからの視線が痛い気がする。
どれもこれもキリコさんのせいである。



「で、帰っていいですか」

「疑問系になってないぜケイちゃん!」


変な人と知り合いになってしまった。






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