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「………」

「………」

沈黙する私と男。すごく、気まずいです。
お互い口を開く切っ掛けを失ってしまったせいでこん状況ができあがってしまった。

おい、なんか言えよ、と目で牽制しあう私達。
端から見れば修羅場かと見紛うような空気だった。

「…この団服がダサいのはわかるけどさ、そのゴミでも見るような目やめて」

やがて、いたたまれなくなったのか男が喋りだす。発言権押しつけ合い勝負に私が勝ったともいう。

「だってダサいものはダサいし、大体なんなのその髪汚い水色みたいな色して。あとおかっばとかまじないわーキモいわ変態くさいわー」

「これはヅラだ!本気でこんな髪型にして色染めるわけないじゃん!さらりと酷いなあんた!」

「あとさ、その服とかもうなんなの?それが格好良いとでも思ってるの?ブーツインがさらにダサさを加速させてるんだよ」

「やめてそれ以上俺のハートに傷をつけないで」

「…きもっ」

「シンプルに刺さる!」

あれだけの沈黙が横たわっていたのに、一度喋り始めればペラペラ喋り出す私達だった。

若干涙目になりつつある(気持ち悪い)男を見て、それからまだ捕まれてる腕を見て考える。
にこり、とできるだけ優しめな笑顔をつくる。

「いい年して、その格好ははないと思うなお兄さん」

「いかにも造ってます!って笑顔で微笑むのやめて!だってしょうがないじゃん今就職難だから、ギンガ団ぐらいしか内定とれるとこなかったし!」

どうやらお兄さんも色々苦労しているようだった。

「でもこの格好はマジでなんとかならねーかなー…。それさえ除けば給料もそこそこだし、業務内容もキツくないし」

しまいには愚痴りだした。

というかこの人、ギンガ団とか言ってたが、なんだそのデジャヴを呼び起こす感じは。
初代でいうところのロケット団みたいな存在だろうか。

「でも格好でプライスレスだよね」

「そうなんだよなぁ…」

顔を下に向け悩み始めてしまった。相当その格好が嫌らしい。まあ、ダサいししょうがない。

「まあなんだ、お兄さん、愚痴なら聞いてあげるからさ、」

「マジで!?」

パッと顔を上げたお兄さんは大層嬉しそうな顔をしていた。
とんだ変わり身の速さである。

「あー…やっぱ、今の無しで」

長くなりそうだ、と感じたので拒否しようと思った。お前も変わり身速いとかいわない。歩き通しで疲れてるんだ私は。

「ダメ。一回言ったんだから無しっていうの無し」

いつの間にか腕を掴まれているのではなく両手を握りこまれていた。

…逃げれない。







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