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トバリシティについたー!いえーい!

と叫び出したくなるほど疲れでテンションがおかしくなっていた私だが、理性はまだ残っていたので何食わぬ顔でトバリシティへと入った。
なによりつっこみ不在だし。
天然ちゃんでもないのだから一人でボケてても痛いだけである。
仮にここで私がボケても、優しい町の住人達は生暖かい目で私を見つめるかスルーして通り過ぎていくだけだろう。悲しい。

そんな痛い子になりたくない私は、初めて見る町の様子を黙って見渡してみた。

全体的に、石に造りのものが多く落ち着いた外観である。
しかし所々パチンコっぽい店やデパートなどキラキラしたものが建っており、ふとビル街にちょこんとある寺を思い起こさせた。
…と、そこまでならまあいいのだが、明らかに変な、ちょっとどころか大分おかしい建物があるのを発見してしまった。

あの、明らかに機能重視でなくデザインも悪趣味な変てこりんのビルはなんなんだ。
トゲとか付いてるぞ。小さい子が間違ってぶつかったりでもしたらどうすんだ。

というかこの悪趣味さに若干どころじゃない既視感を感じるのは気のせいだろうか、いや、気のせいじゃない。

「…ギンガビル、だったかな」

どことなくそれと似たようなふいんき(何故か変換できない)を感じるのは何故だろう。出来れば杞憂であって欲しいんだが。

盛大にひきつつビルを眺める私だったが、ふと倉庫みたいなところから出てくる人影が視界に入り、思わずそっちを見る。

倉庫から出て着た人をみた私は、ドン引きした。

…うわー。これはひどい。
何あれ何なのあのダサさぱない。
服キモいよセンス欠片も感じられねぇ。
これは呆れ通り越して笑い出したくなるレベル。

その人物のダサさに気を取られていた私は、私のガン見に気付きそいつが私の方に向かってきているのに気付くのが遅れてしまっていた。
ふと気付けばばっちりと合ってしまっていた目と目に、ようやくヤバいと感じた私はさっさと逃げるべく足を動かそうと、

…したのだが、その前にそいつに腕を掴まれて阻止されてしまった。なんてこったい。

振りほどけない、しかし痛くはないという絶妙な力加減で握られたそれを、私みたいなインドアオタクがどうかすることができるはずもなく。

どうしようか、と思った矢先、改めてその男の姿が目に入った。
しかも今度は近いので細部まで見ることができる。

「…ないわー」

見れば見るほど、そうとしか言えない。残念すぎる。
なまじ目の前のこいつがすこーしイケメン染みてるのがより一層、駄目だ。
せっかくの平均よりは上かな、って位の地味イケメンフェイスが格好のせいで台無しである。プラスどころではなく大幅マイナスである。

思わずもれた一言に、男が眉を潜めた。

あ、ヤバい。これは絡まれるフラグ。

もしかしなくとも、ヤバいかもしれない。







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