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「最初の子はさ、執着心が半端なかったんだよ。元の世界…いや、世界そのものじゃないか。その子にとっての世界かな。とにかく、その子はそんな感じの子だったから使えると思ったんだよ。元の世界への帰還を仄めかして、それをネタにゆすってやろうってね。でも、駄目だった。あの子は僕の言葉に揺らぎもしなかった。…やっぱ、転生は失敗だったね。本当、誤算だった。あの子は強い。精神的に強すぎる。それは、いらない。
だから、次は反対に執着心が薄い子にしようと思ったんだ。
家族にも、友達も世界に対してもね。
君は実に最適だった。
君は感情がないワケじゃない。非情でも、冷酷無比でもない。人形みたいに心が無いんじゃないんだ。心もあるし、嬉しかったり、悲しかったり、怒ったり、そんなことができる普通の人間。だけど、とても薄っぺらい、そんな人間だ。愛情も執着心も恋心も郷愁も無いワケじゃないのに、本質がとても薄い。心があるのに、君は容易く捨ててしまえれる。後ろを向かないで、簡単に前を向いて歩いていけてしまう。まあ、ただ君の頭がすっからかんで特に物事を深く考えないだけなんだけどね。君は、深く考えたりなんてしない。考えるまでもなく、現実を理解して考えない。ぺっらぺらの薄っぺらい人間。だから何も考えることもなく勝手にやってくれると思ったのに。またまた誤算だったよ。動くも動かないも、君は大事な場面には関われない。君自体がそんな人物じゃないんだから、そんな"濃い"イベントに参加できるわけなかったね。前の子がアレだからって極限に走っちゃった結果がコレだよ。
まあ、君ら二人っていう前例がいたから当たりの子を見つけれたんだけど。君も会ったでしょ?いかにも、"ヒロインです"的なオーラを放ってる子。あの子は楽ちんだねえ。僕が何にも言わなくても勝手に動いて巻き込まれて関わってくんだもの。まさにイイ子。都合の良い子。君とは違う子。
…べらべら喋ったけどさ、要はね。
君は一生、大事なものができないし、誰かにとっての大事な人にもなれないだろうってことだよ。

あーあ、ホント、巧いこといかないや。王道じゃつまんないのに、結局はこうなるんだからなぁ。やっぱ、マイナーは難しいな。動かしにくくってたまんない。



あれ?まだ居たの?もう用は無いから帰っていいよー。楽しいトリップ生活をどーぞエンジョイしてね。バイバーイ」







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