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散歩という名目で町をぶらぶらすることにした私達。
おねーさま方の視線が痛いこと痛いこと。
いやはや、やはり隣にいる人達のせいですね、わかります。
ていうか、少数だけどヤロー供の視線を感じるんだが…。
言っとくけど、椎は生物学上男ですから。同性愛者の方の嗜好を否定するつもりは無いけれど、私の目が黒い内には誰にも椎をやる気なんてないんだからね!
「…お?何かね椎」
くい、と服を引かれた気がしてそちらを見れば、椎が袖をくいくいと引っ張っていた。超絶かわいい。
「あれ、なんですかー?」
指差すと共に、こてんと首を傾げる。
椎が指したところを見ると、そこにはクレープ屋という文字。
「椎、クレープ知らないの?」
「知らないですー」
ジーザス。なんてこと。
この御時世でクレープ知らないとか、ふゆほたるか。
あ、でも、椎野生だったか。なら知らなくて当然なのか?
「ふむ…論より証拠、習うより慣れろ。
いっぺん、食べてみる?」
お財布にも余裕が…こそりと確認。…うん、ダイジョブ。あるある。
「1個微妙な例えがあったような」
「しゃらーっぷ!」
横目でじろり、と睨み、兄貴を黙らせる。最近、口がすぎるぞこいつ。
…睨んでるのになんで微笑ましそうな顔するかなぁ!もう。
ちゃりーん。ありがとうございます!とクレープ屋のお姉さんの元気な声に送り出され、手にした物品を椎(ついでに一城)に手渡す。
「………」
無言無表情でじいー、とクレープを見つめる椎。
残念、どんなに見続けてもブラックホールは誕生しないのさ。
じろじろと不躾に見つめられて、いい加減クレープの方も食べて欲しいだろうに。
「………」
はむ。
想いが伝わったのか、やっとこさクレープを口に含む。
「…………」
もぎゅもぎゅと噛み噛みしながらも、無言。
この子ってば空白が多いよねー。タメが長いというか。やっぱ癖?
「…やんごとないですー」
いやおま、
言ってみたかっただけだろ。
とりあえず、なんだか嬉しそうなのでよしとしよう。
よかった。気にいってくれたみたいで。
それからは一心に食べる椎。脇目ふってないぜ。
「あのさ」
水をさすように割り込んできた声の方向を見た。ら、真剣な顔をした一城が居た。なんとなく嫌ーな予感がするものの、先を促す。
「ホイップクリームでぷれいとかしたい」
「黙れカス」
お前オチ作らんでもいいから。そーゆーのいらないから。
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