10
目が覚めた。
知らない人が一緒に寝ていた。
………あ、この人一城に似てるなー。雰囲気がびびっとくるぜ。橙色の髪が素敵デスネ。
………。
………あれ?
何か、おかしくないか?
そもそも何で知らない人と寝てるんだ。しかもこいつ男だよ?ヤローだぜ?そして私は女だ。仮にも嫁入り前の。
………あれ?
「あー…。おはよう、ケイ」
男が喋った。屍ではなかったようだ。
っていうか、声に聞き覚えがあるんだけれど。寧ろ、一番最近よく聞く声なんだけど。
「………一城サン?」
YESじゃなかったら叩き潰そうと決意。全力で暴れるし叫ぶぜ私。
「そうだよ。よく分かったなー」
すごいすごいと頭を撫でられる。
私があと10くらい若かったら嬉しい行為だけれど、生憎10代後半なので嬉しくない。
けどまぁ、撫でられるのは別に不快じゃないので大人しくされるがまま。
………な、ワケあるか。
「あっぱー!!」
といやっ!気合と共に顎にどーん。
ごーん。あらいい音。
「っ!」
声の無い悲鳴。
まぁ、口あけてたら舌噛む可能性大だもんね。
痛そうだ…。でも叩き潰すんじゃないからまだマシだよね。うむ。
私も拳がじんじんするよ。
「痛いなー」
そりゃ痛くなるようにしましたから。
「昨日の"1、変なことしない"を破った罰ですよ」
「擬人化って変なことなのか…」
「多分」
「即答されたー」
「よしよし」
「わーい」
「喜ばれた!」
Mかきみ。
「そういえば、何で人なの?」
もしかして私が知らないだけでポケモンの最終進化形態は人なのだろうか。いやそんなまさか。
「ケイ、知らないの?」
む…。
え、知らないの?みたいなびっくり顔されても。だってトリッパーだものとしか言えない…。
「知らないの!」
プソプソ!と意味無く逆ギレした私に、一城はにこにこしながら私の頭を撫でた。
………え、何この敗北感。
「俺達ポケモンは、野生だと擬人化できないんだけど、人との関係が深いと擬人化できたりするみたいだよ。
人の手持ちなら皆擬人化するって訳じゃないから、知ってる人の暗黙の了解らしい」
へぇへぇへぇ。3へぇ。
「そうなのかぁ」
ゲームとは違うんだなぁ。
というか、それなら私知ってなくてもおかしくないよね。なんで、知らないの?みたいな素振りだったんだ。お茶目か。
「びっくりしたよ。いきなり人になってるから」
「えへ」
「その姿じゃ可愛くないぜオニイサン」
説明しとこう。
今、一城は肩に付かないくらいの橙色の髪に、…橙?茶色?と迷う色の瞳。先っぽが絨毯の端のわしゃわしゃみたいになってるマフラーをつけ、暑そうなコートを着ている美形のお兄さんだ。
"美形"のお兄さんだ。(強調するべきだと思いました)
見た所10代…半ば?後半ぐらい?かな。私と同じくらいだ。
「驚かせてごめん。嫌ならもうしないよ」
じろじろ見てた私を何だと思ったのか、急に殊勝になる一城。…あれ、なんか可愛く見えるよ?おかしいぜ。
「嫌じゃないよ。むしろ美形かむばっく」
判断基準そこかよ!とか言うな。私は人間だ。そして女の子だ。よって真理だ。
「よし、今日は買い物しよう。旅するなら色々欠かせないだろうし」
この話は終わりーとばかりにパン、と手を叩く。さっき殴った手の骨に響いた。痛いです。
「ついて行っていいかい?」
「おけおけ。むしろ一緒に買い物してくれ」
一城の方が詳しそうだし、むしろ私だけじゃポケセンに帰ってこれない可能性もある。それは怖い。
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