06

「そうだ、ブイゼルくん」

そうだ、京都へ行こう!でなくって。

『ん?』

「名前、要るのかなぁ」

だってブイゼルって種族名だし。
野生のブイゼルの群れとかにまじったら「ブイゼルくんー!」って呼んでも皆振り向くよ。想像するとなんか怖え。
そうなると名前、必要かな。でもサトシは特につけてなかったから要らないのかも。
ってなんでサトシが基準なんだ私は。

「と、いうわけでブイゼルくん名前なかったよね?」

『何がと、いうわけでなのかわからないけどケイの脳内でなんらかの会議が行われていたことはわかった。
うん、確かに俺にはブイゼルという種族名しかないよ。
生憎と固有名詞は持っていない名も無きブイゼルだから』

名も無きってフレーズなんか格好良いな、おい。

「じゃあ、名前どんなのが良い?というか名前いる?」

本人の意思なく勝手に決めてもあれだしなあ、と思って聞いてみる。
かってにDQNネームつけられたらそれこそ絶望だし。安成だけはない。

『いるいる。超いる。
なんかかっちょいいのがいいな。髑露丸みたいな』

「うわかっこいい!!かっけ!!かっけすぎてなんか逆に引くわー。センス尖ってるわー」

『んー突起丸?』

「なんか1ランクどころじゃないセンスの下がりようだな。
あとどことなく卑猥な気がするのは何でだろう。気のせいかな」

『怒張ま「言わせねーよ。何なの君。名前に丸つけたいのかこの変態。棒が付いてて完璧!とか言うなよ」

『否定はしない』

「否定しなかった!」

なんだこいつ、オープン、だと…!?もふもふな姿だからよくやからんけどきっと表情一つ変えてねえぜ。下ネタに顔を赤らめるような初心者じゃねえぜこいつ。中途半端やむっつりより質悪いだろ…。

『否定はしないよ?だけどさ、』

「だけど?」

『ケイも充分想像力逞しい変態だなと、俺は今の会話を通して思った』

「あはは。ねぇ死んで」

連鎖です。そういう流れだったもの今。ぷっよぷよ。
現代でパソをいじってればわかるようになってしまうの。しょうがないの。大人になるって、こういうこと。

『あ、そこ段差気をつけて』

「うぉ!ほんとだ。ありがとう」

会話に気をとられて段差で転ぶところだった。危ない危ない。

『いえいえ女性を守るのは男としては当然だからね』

わあ紳士。…なんてことだ。紳士か。畜生、男は大体が紳士なんだって誰かが言ってたのは本当だったのか。

『ところで名前は?』

…本題を忘れてた。脱線しまくってたね私達。
うーむ、と頭の中で漢字辞典やら何やらをペラペラと捲る。

「………一城?」

『イッキ?』

お酒じゃないです。犯罪です。年齢的な意味で。私二十歳越してないので。

「一つの城で一城。強そうじゃない?」

なんとなく、イメージで。
ちゃんと強そうな名前、という一城の意見も統合して考えてみた。表現できてるかはともかく。

『…うん。いいな、それ』

気に入って貰ったようでなにより。丸は入れてないけど。むしろ入れてたまるものか。

「よしよしなら今からブイゼルくんは一城ね。ひゅーどんどんぱちぱちー」

『いえーい』







[][]

top


[ 6/52 ]





第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -