04

開けた場所に出て、戸惑い立ち止まった一瞬がいけなかった。
みょみょーん、と今の私には悪魔でしかない声が近づいてきているのに気が付いで振り向いた時には、兎は私の目の前でその恐ろしい耳を振り上げていた。
何か考えることもできず、あ、と間抜けな声だけ漏らす。

「みょみょーん!?」

突然、水の塊が物凄い勢いで私の横を通り過ぎていった。
速すぎて何も反応もできなかった。

水の塊は私の後ろに居たうさぎさんにクリティカルヒットし、うさぎさんは若干よろよろ…として、いずこへ去って行った。

これは…もしや、助かった?

『お嬢さん、大丈夫か?』

近くから誰かの声が聞こえた。誰だ。
そうとうなイケメンだぞこれは。声だけだけど。だけど返事しないぞ私は。知らない人の呼びかけにほいほい答えるような危機感の無い奴じゃないもの。うん。
返事をせず、声が聞こえきた方を見た。
…イタチ?うん、多分、イタチだ。多分。

オレンジ色の、イタチみたいな生物が私の前に居た。
え、え、え。多分、この子があの水出して助けてくれたんだよね。命の恩人?いや、人じゃないけど。

「えっと、ありがとう、イタチくん」

恩人とわかった途端、全身からホッとし、安心感が込み上げてきた。腰が抜けそうだったが、ぐっと堪えた。
いっやホント、命の危機だった。私あの可愛いうさぎちゃんに殺られちゃうところだった。洒落にならない怖さだったよ、あれは。
あんなに可愛いのに命の危機感じるってどういうことなんだ…。
ともかく、イタチくんには感激感謝あられの雨だった。もうなんか、感謝しかない。

『どうしまして。こんなところにお嬢さんが一人で居たら危険だ。見たところ、ポケモンも一緒ではないようだし』

また声がきこえてきた。今度は至近距離だったのでわかる。
声、イタチくんから聞こえてきた?
と、いうことは。

「え、すごい。イタチくんが喋った」

『え?』

このイタチは喋るらしい。なんてこった。あり得ないような気もするが、関係ない。命の恩人だから関係ない。というか突然森に移動しててあきらかに見たこともないような動物が岩割ってて追いかけられて、という体験をした後だから喋るイタチが居てももう驚かない。
私に危害無いなら何でもいいや、というのが素直な気持ちである。
というかそれをさっきの可愛いウサギにも適応してくれよ。平和的に話し合いしたかったよ。

「イタチくん。ここってどこら辺かな?」

『え……ここは、ソノオタウンの近くで、ハクタイの森の外れだけど…』

「そのーたうん?はくたい?そう言えば、ポケモンとか何とか…」

ポケモ○?ポケットに入るモンスター?携帯獣?え、ていうことは。
なんてこった。世界違うじゃないか、ここ。通りで生き物がやたらでかいはずだ。

知らない生き物しか見てないけど、もしかして知らない地方だろうか。




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