「では2-Bはお化け屋敷に決定ということで
あとは振り分けられた役割に沿ってそれぞれの班で準備を進めていってください」


目を覚ますと教卓に立ったビビがなにやら話し合いを進めていて、なんだろうと黒板を見れば"学園祭"の文字が。
ああそうだった、今はロングホームルームの時間なんだった。
ふーん、うちのクラスはお化け屋敷になったのか。
どうせならもっと稼げるやつに…って


ん???


セット係のところにあたしの名前が書かれてるんですけど。
しかも班長っ!?


話し合いが終わってビビが席に着こうとするのを捕まえる。

「ビビー!!
あたしいつの間にか班長になってる」

「いつの間にかじゃなくて、ナミさんが居眠りしてる時に決まったのよ」

「そんなあー」

「自業自得ね」


ビビに泣き付いてみるけど、にっこり笑顔でバッサリとあしらわれてしまった。

「学園祭まであと1週間しかないからサボりは禁止よ、ナミさん」

「へいへい」

学校行事となるとビビってがらりと生徒会長の顔に切り替わるもんなあ。
サボることはもうあきらめてます…。

「私は生徒会の方で忙しくなるから、クラスの方はよろしくね」


あーあ学園祭までは放課後は全部準備にあてられるのか。
ロビンとの甘い時間があああ!!







放課後、それぞれの班に分かれてお化け屋敷の準備をしているわけだけど、これがなかなか大変。
どうせやるならとことん恐くしてやろうとこだわってたら本格的になりすぎて1週間じゃ間に合わないかもしれない。
日が落ちて夜と言っていい時間帯になっても作業は終わらなくて。


「ナミー!!
ちょっと採寸させてー」

何事かと振り返れば衣装係の子がメジャーを片手に迫ってくる。

「な、なんで?」

「いやあードラキュラの衣装を作ろうと思ってるんだけど、ナミってドラキュラのイメージにピッタリだから」

それって喜んでいいのやら。
一体どんなイメージだよ。

「……それで?」

「どーせならナミにお化け役としてドラキュラになってもらおうと」

「嫌ですっ」

冗談じゃないわよ。
そんなのになったら学園祭当日に遊べないじゃない!!

「そこをなんとかっ
じゃあ学食の食券半年分でどう?」

「よしまかせてっ
ドラキュラになりきってみせるわ!!」

物で釣られたらしょーがないわよね。
やっぱり思い出よりお金よっ
これで昼食代が当分浮くわー!!


「じゃあそういうことで」

そう言いながら衣装係の子が素早くサイズを計って自分の持ち場に帰っていった。


さて、仕事しなきゃとお化け屋敷の看板を作ってたら、今度は同じ班の子が

「ナミー!!
ダンボールまだある?」

「もうないよ」

「もうダンボールがないみたいなんだよね」

「んーじゃあ他のクラスからもらってくるよ」

他にも暗幕とかガムテープも借りに行くついでだし。
他のクラスの偵察を兼ねて。

「んじゃあ行ってくるねー」

「お願いしまーす」


とは言ったものの、時間帯が遅いせいでまだ校舎に残って準備してるクラスはちらほらとしかいない。

薄暗い廊下を早歩きで進んでたら、明かりがついてる教室をやっと発見。
助かったーと思いガラガラと扉を開けたら、


「ロビンっ!!」

「あらナミちゃん、どうしたの?」

こっちを向いた瞬間にふわりと優しくロビンが笑ったから、頭がくらくらした。
し、心臓に悪い……油断してたわっ

「えっあ、ダンボールが足りなくなったから他のクラスから分けてもらおうと思って
…ていうかロビンは何してるの?」

「わたしは学園祭で使う備品をこの空き教室に運んでいたの
ガムテープとか色々と不足するだろうと思って
ダンボールもちゃんとあるわ」

そう言って沢山の備品の中からがさごそとダンボールを探してくれるロビン。

っていうかその髪型…
前にも一度だけ見た幻の、ポニーテール!!!
ロビンが動くたびに黒い艶やかなその尻尾も揺れて、これは誘っているとしか思えませんっ

ふらふらとロビンに近づく。
だ、抱き締めてもいいよね?
あたしたち恋人同士なんだし。

…そう言えばキスも前に無理矢理しちゃったやつと告白のやつの2回しかまだしてないじゃんっ!!
いつも抱き締めたり手を握ったり、たまにほっぺにちゅってするだけで。
そろそろその、次のステップに…


ごくり、と生唾をのんでそっとロビンの肩に手をおいた。
うー、ロビンに触れることになかなか慣れないのはなんでだろう。
いつも胸がどきどきうるさくて冷静になれない。
えーいこうなったらヤケだー!!


「ナミちゃん?」

ロビンが不思議そうにあたしの方を振り向こうとするから、勢いで後ろから抱き締めた。

「ロビン、ポニーテールすごく似合ってる」

誘われるように白いうなじに優しくキスをしたら

「やっ……ちょっと…、ナミちゃんっ」

ロビンはびっくりというか思わぬ展開についていけてないみたいで、焦りながらあたしから距離をとろうとする。
このチャンスを逃したくなくてロビンにキスをしようとしたら、廊下から生徒の騒がしい声がして。
ばっとロビンが抱き締めてるあたしを引き剥がした。

「ナミちゃん、あの……」

ロビンがなにかを言おうとしたらガラガラと扉が開いて、

「ロビン先生ー
ビニールテープありますか?」

そう言って女子3人組が入ってきた。

ああー邪魔されたー!!
それにしても、ロビンもあんな風にあたしから距離とらなくてもいいじゃん。
せっかく勇気だしたのにさ。
やっぱり同性に触れられるのに抵抗あるのかな…
ぐるぐるとネガティブな方向に考えてたら


「今日のロビン先生、かわいい髪型ですねー」

1年生のひとりがロビンの髪の毛を触ってて、


な、な、なんてことをー!!

「そう? どうもありがとう」

なんでロビンもにっこり笑ってるのー?
さっきあたしの時には拒否したのにっ


「そういえば先生って学園祭は誰かとまわるんですか?」

もうひとりの1年生がそう尋ねて

「今のところ予定はないわ」

それを聞いて、はっとしてしまった。
学園祭一緒にまわろうって言うの忘れてたー。
しかもドラキュラにならなきゃいけないからもう誘えないしっ
くそー、思い出よりお金とか思った自分が恨めしい。


「えーそうなんですか?
じゃあ私たちとまわりましょうよ!!」

さらにもうひとりの1年生が思いもしないことを訊いて、

「ええ、いいわ」


な、な、なんだとーっ!!!

なんであっさり承諾したのよロビンっ
しかもあたしがいる目の前で!!
なんの恨みが…もしかしてキスしようとしたのがそんなに嫌だったとか……
だからってこんなあてつけみたいなことしなくてもいいじゃん!!
もう頭にきたっ
ロビンなんて知らないっ


「それじゃあ先生、失礼します」

ぶっきらぼうにそう言って適当にダンボールを抱えて飛び出した。

ロビンのばーか、鈍感っ
いつもいつもあたしばっかりが一方的に好きな気がする。
ロビンはいつも冷静で、あたしのことを適当に流してるんじゃないかって悩んでたのに。
今回のことでそれが深まっちゃったよ…

もうしばらくは顔も合わせたくない!!




どーせロビンは平気なんだろうけど…




<あとがき>
ということで次回に続きます。
付き合って初のケンカ。
これをバネにしてさらに愛を深めてほしいなあと思います。
3部作の予定、場合によっては4部作になるかも…






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