かまってほしいだけ1


放課後の見回りの途中。
なんでこのタイミングでここを通ってしまったんだろうと、すぐに後悔した。

話はよく聞こえないけれど。

自分の目の前で仲好さそうにふざけあっているのは大事な後輩と、それよりも大切な

大切な恋人。

僕以外の相手に

そんなふうに笑いかけないで欲しい
そんなふうに髪に手をからめて撫でないでほしい
汚い感情なんてことはわかってる。

でも、それは僕だけのものであってほしいんだ。


...かまってほしいだけ

次の日。

今度は一人で廊下にいた会長を見つけた。
「会長!」
少し声を張り上げてその場に響いたその声に、相手は気が付いてこっちを向いた。
「お、椿じゃねーか。」
「どうしたんですか?ここ1年の階ですけすけど」
「別に?なんとなく」
なんとなくで一年の教室に?
「理由もなしにこんなところ普通こないですよね」
「え?」
「キリに会いに来たんですか?」

思わずつぶやいてしまったその言葉。

いいたくない

いいたくないのに・・

「は?なんだそれ。あ・もしかして昨日の見てたのか?」
「・・見てました。」
「なんだよ近くにいんなら声かけてくれればよかったじゃねーか。」

声を?
あのタイミングで?
何を言ってるんだろうこの人は。

「そんなのっ・・そんなのできるわけないじゃないですか!!」
「え・・って、おい椿!!」

自分の胸にこみ上げてくるざわざわとおちつかない感情を隠すかのように僕はその場から逃げた。


この日から数日

僕は会長を見かけても話しかけることができなかった。

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放課後。

生徒会室にいるときはみんなに変に思われないように普段通りに過ごしていた。

・・・キリとも。

「会長どうかしたんですか。」
「別にどうもしないが」
「そうですか?いつもより気分がよくないように見えます」
「そう見えてしまったか、すまない。でも本当に何でもないんだ。」
「そうですか・・あ!でも何かあったら俺に言ってください!!俺頑張って会長の相談にのりますし力にもなりますから!」

ああ、なんて優しいんだろう。

「ありがとうキリ。」

後輩としてなら君は一番大事だ。
そんな君に「あの人の傍にいないで欲しい」なんて醜い言葉を吐けるわけがない。

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