「・・・ふっ・・・っく・・・」
 押し殺した声が響く。泣き声混じりの鳴き声を上げながら、安形の膝の上で椿は自分の下肢に手を添えさせられていた。片脚は安形の腰辺りに掛けられた状態で、もう片方は安形の手によって自らの肩近くまで開かれている。倒れそうになる身体は、背中に廻された腕で無理に安形へと引き寄せられていた。安形が視線を注ぐ中で、椿は自分のものに指を絡めて擦り上げ続ける。
「こんなんで、イけんの?」
 冷たい瞳で安形が問うと、びくんと椿が震えた。
「いつもしてる通りにすりゃ、いいんだよ」
 濡れた瞳が安形を捉え、羞恥に椿の顔が染まる。した事ねぇとか言うなよ、と声を響かせると、一瞬目が見開かれ、屈辱に顔が歪んだ。
――それでも、
 早く、と耳元で促せば、椿は震えながらもまた手を動かし始まる。先程よりも動きを速めて、自らを追い詰める様に。
「・・・・・・誰の顔、思い出してんの?」
 囁きに更に歪んだ目の光が、再び安形の目を掠める。
――こうやって言葉を浴びせる度に、
 ぐっと息を飲んで、椿はひたすらに手を動かしていた。それでも絶え間無く唇からは快感に声が漏れ、時折甘く染まる。
「っん・・・あ、ぅあっ・・・あっ!」
 びくびくと身体を震わせて、椿の下肢から白い液が飛び散った。脈打ちながら流れ出るそれを、安形は眺める。力が抜けた脚から手を外し、代わりに椿の先端に指を這わせた。
「・・・っ・・・んんっ・・・」
 精液を絡め取り、指に纏わせる。無理矢理傾けられた椿の胸元から垂れるそれも、追って指を這わす。
「意外とヌいてんだな。あんま、濃くない」
 琥珀からまた雫を流しながら、そこが悲しげに歪んだ。先に在るのは安形の顔。残酷に笑みを浮かべる自分のそれが、そこに映り込んでいる。
――椿が、オレを、見る。
 琥珀の中の自分の顔が、愉悦に微笑んだ。例え羞恥だろうと絶望だろうと、どんな様でも構わない。映すのが自分の姿であれば。安形にとって、今はそれが全てになっていた。
――どうせ、オレには笑わないだろ?
 指を動かし、果てたばかりのものを掠め、その奥へと動かす。軽く後ろへ触れると、今度は不安が色を見せた。
――あんな風に、時計に触れた時みたいに、
 玩ぶ様に外側に円を描く。何を、と小さく漏らされた声を聞きながら、安形はそこへ指を突き立てた。――笑い掛けるのは、藤崎だけになんだろっ!!
「いっ・・・あっ・・・!・・・」
 痛みに椿の身体が仰け反る。それでも指を止める事も無く、安形は椿に中へと深く指を潜らせた。指で取った精液を潤滑油代わりに、きつい入口を割り開いて柔らかく絡む内壁を指先で押し返す。
「いっ・・・や、かい・・・ちょ・・・やぁ・・・」
 椿の言葉に自分の呼び名が混じった事に、安形の背筋をぞくりと快感が這った。それに促される様に、中指の先で入口をつつく。身体同様強張っているそこは、到底二本目を受け入れられる様には思えなかった。
「・・・こっちは、まだなんだ」
「っ・・・く・・・ま、だ・・・?」
 苦痛に声を漏らす椿が、安形の腕を握り締めながら疑問の声を上げる。言葉所か行為の意味さえ理解出来ない様子に、安形の中で残酷な歓びが沸き起こった。ゆっくりと一度、指を引き抜く。
「・・・んっ・・・ふ・・・・・・」
 後ろが解放された事で、微かに椿の身体が弛緩した。束の間の安堵に瞳を伏せて息を漏らす。それを少し眺めて、安形は指を二本に増やして再度突き入れた。
「あ、ああっ、あっ!」
「ここ、こんな風にされんのって、初めてなんだなって」
 先より強く閉じようとする口を、乱暴に何度も開いて掻き混ぜる。安形の腕に爪を立て、激痛に叫び声を上げる椿の瞳が、涙を溢れさせながら安形を見詰めた。そこが懇願しているのを感じつつも、安形は更に指を動かす。
「この後、どうするか、分かる?」
 叫びながらも椿は安形の問い掛けに何度も頭を振る。無理に後ろの口を開かそうとすればする程、拒絶に指を締め付けてくるそこを、力尽くで犯し続ける。そうして男同士での行為など知るはずもない身体を確認して、漸く安形はそこから指を抜いた。安形の指に絡められていた椿の精液が、それを追う様に糸を引く。
「・・・うっ・・・ぅう・・・かっい、ちょぉ・・・・・・」
 呼び名を聞きながら、涙が自分のシャツに落ちるのを見た。震える身体を抱き締めて、至福の笑みを浮かべながら、安形は椿の耳元で囁き掛けた。
「オレが椿の最初の男になんの。分かる?」
「かっ・・・いちょ・・・・・・」
 安形自身が呆れる程の優しい声音だった。これから行う事を考えれば、本当に呆れてしまう程の。痛みの残滓に荒く息をつく椿は、最早焦点の合わなくなった瞳で、それでも囁きの主を見る。安形の指が顔を汚していた精液を拭って、椿の頭を引き寄せた。近付く顔に自然、椿の瞳が閉じられる。
――受け入れられてるって、錯覚しそうだ・・・・・・
 心で苦笑しながら、安形は引き寄せた唇に口付けた。柔らかな、微かに血と精液の味のするそこを塞ぐ。そうしながら、安形は一気に残酷な一突きを突き入れた。

2011/10/13 UP
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