安形は椿の脚を解放すると、身体を反転させて、今度は両手首を背凭れの後ろへと縛り付ける。次に何をされるのか薄々分かって強張る椿に、わざと聞かせる様に音を立ててベルトを外した。
「何? 怖い?」
 背凭れに額を預けて俯いたままの椿に覆い被さる様にして、頭上から声を投げる。
「ひっ・・・っ・・・」
 左手を脇から差し込んで椿の脚の間に着き、耳元に唇を寄せれば、椿が怯えて声を上げた。椿の顎に手を掛けて、安形は無理矢理顔を自分に向けさせる。
「・・・昨日の事、思い出してる?」
 無言のままで、椿は安形を見返してきた。カチカチと歯を鳴らして涙だけを浮かべる瞳に、安形の心の奥に微かな痛みが走る。それに突き動かされて、そっと涙の跡に舌を這わせた。小さく身体が動いて瞳が閉じられると、安形はその瞼に唇で触れる。
「会長・・・・・・」
 唇を離した瞬間、間近で声がした。誘われて、その開いた唇に己のそれを重ねる。差し込んだ舌先で口腔を探り触れた椿の舌は、一瞬固く縮まったが側面をなぞると柔らかく踊った。
「ん・・・ふ・・・・・・!」
 鼻に抜ける甘い声に、思わず安形は椿の身体を抱き締める。しかし背中に安形自身が押し当てられた感覚に、椿は目を見開いて激しく身体を引いた。触れていた唇が外れ、安形から遠退く。
「あっ・・・・・・」
 自分の反射的な行動に、椿自身も驚いて小さな声を漏らした。視線を向け、間近で見た安形の表情に椿が凍り付く。次の瞬間、安形は椿の脚を持ち上げ、身体を押さえ付けると椿の後ろへと自身を突き立てた。
「いっ、あ・・・っ!」
 苦しそうに声を上げて、椿の身体が仰け反る。
――勘違い、するなよ。
 絶望的な気分で自分に言い聞かせながら、安形は半ば程まで身体を進めて動きを止めた。持ち上げた脚を柔く揉みながら、左手を椿の前へと動かす。
――コイツは怖がってるし、嫌がってる。
「・・・ふっ・・・うぅ・・・んっ、あっ・・・・・・」
 前に触れて撫で上げれば、苦しげに呻く声が艶を帯びた。快楽に身動ぎすれば、拘束されている手首が擦れ、後ろを抉られて椿はまた小さく呻く。
――オレは、好かれてなんて、ない・・・
 確実に快感を与えながら、安形はゆっくりと身体を動かした。苦しみと快楽との混ざり合う声を嗅ぎ分けて、己の下肢で椿の中を探る。
「ん、んっ・・・っあ!」
 一点を安形のものが擦った瞬間、椿が大きく喘いだ。そこが先程指で触れた辺りだと確認して、安形はもう一度同じ部分を刺激する。
「っ、はっ・・・うっ・・・」
 椿は耐える様に歯を食い縛って声を抑えるが、安形の左手の中では快楽を主張していた。微かに笑んで、安形は左手に力を入れ、身体を動かし始める。
「やっ・・・ああっ、あっ・・・ぃや、やぁっ・・・」
 指の時と同じに、椿は何度も頭を振って快感を否定していた。安形は分かっていて何度もそこばかりを刺激しながら、左手を椿の下肢から離す。代わりに上へと移動させ、胸元の突起を指先で突いた。大きく喘いで身体を仰け反らせた所為で、逆に強くそこを押し当ててしまい、椿は更に声を上げる。その響きを聞きながら、安形は指に触れていた粒を強く摘まんで、椿の中の性感帯を激しく抉った。
「・・・んっ、あああっ!!」
 きつい快楽に腰を激しくくねらせて、椿の下肢から精液が迸る。びくびくと身体だけでなく、自身を銜えている内側をも痙攣させるのを感じながら、安形は満足そうに咽の奥で笑った。
「あ・・・やぁ・・・・・・」
 安形の嗤い声に現状を意識して、椿の唇から呆然とした声が漏れる。仰け反ったままで、何かを否定する様に小さく振られた顔から、涙の飛沫が飛んだ。追い打ちを掛ける為、安形はその耳元に唇を寄せる。
「へぇ・・・男に犯されて、気持ち良かったんだ」
「ち、がぁ・・・・・・」
 何度も首を振って、椿は否定を続けた。そう、と言いながら、安形は椿の後ろから、イスに吐き出された椿の精液に手を伸ばす。手のひら全体で拭い取り、濡れた手を椿の眼前に示した。
「じゃ、これは?」
「あ・・・・・・」
 逃げられない証拠に、椿が愕然として震える。目を閉じてそれからも現実からも目を逸らそうとした椿の頬に、逃げられない様に精液を擦り付けた。触れていた指先を別の熱い液体が濡らしていく事に、安形は感じていた絶望感が別の物に染まっていくのを感じる。満たされる様に拡がっていく想いのまま、椿の脚を更に大きく開き、まだ達していない自身をより深くに押し入れた。
「これ、感じる?」
「・・・違っ・・・ちっ・・・あっ・・・・・・」
「違うんだ・・・なら、」
 猶も否定を重ねる椿の項に舌を這わせる。びくびくと震えて反応する姿に煽られながらも、自らが達する事よりも椿を追い詰める事に意識を向けた。
「良くなるまで、続けないと。気持ち良くしてやるって、約束したもんなぁ」
「いっ・・・やっ、やぁ・・・っ!」
 熱い吐息と悲鳴の様な嬌声を響かせる椿の唇に、指を差し込んで舌を絡め取る。椿がその苦みと嫌悪に震えて眉を歪めれば、安形の胸が激しく脈打った。嫌がる身体を押さえ付け、自分の身体で快楽を刻み込みながら、

――別に、憎むんなら憎めばいいんだ。

 追い詰めて、残る理性を削り落とす事に、尽くす。

――最後はそれすら、分からなくしてやるから。

 愛しげに肌に舌を這わせながら、ただ、ひたすらに。

2012/01/15 UP
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