「・・くっ・・・ぅ・・ん・・・」
 小さく身動ぎして甘い声を上げながらも、希里は頑なに膝を合わせたまま開こうとしない。安形がムッとして力業でそこを広げようとしても、がっちりと合わせられたまま微動だにしなかった。
――力勝負だと、どうしたって押し負けるんだよな。
 安形はげんなりしながら手を動かし、もう一度下へと降ろす。手の角度を変えて双丘の片方を掴んで揉み上げれば、悦を含んだ声を上げて震える癖に、脚だけは頑なに閉じられたままだった。それ所か、隙を突いては自由な脚の爪先で安形の頭を小突く。イテッ、と声を上げながら掠めた視界の端で、太腿の脇にも刃物傷の痕を見付け、安形はまた苛立った。
「何で足だの腰だのに刃物傷有るだよ・・・」
「・・っ・・・・知るか・・・ナイフ持ってる奴に限って、足狙ってくんだ・・んっ・・・」
 安形の手に声を荒げながらも、希里は文句染みた返事を返す。
――まぁ足狙うってのは、ヤベえ奴の常套手段だけどな。
 そんな事を考えんがら、安形は目を眇めた。嫌な気分に胸を占められながら、人差し指でその傷痕を撫でる。ビクリと希里の身体が震えたものの、相変わらず膝は合わせられたままだった。
――これだと、埒が明かねぇな。
 胸の淀みは一先ず置いて、安形は今の状況の均衡をどう崩すか考える。何気に目に映った掴んだままの足首の先、足の甲に出来た小さな青痣に音を立てて口付けた。ちゅ、と響いた音を耳にして、希里の眉が微かに動く。嫌がる様に足の甲が蠢いたのを見て、安形はまた唇の端を少し持ち上げた。
「キリって結構、こう、スタンダードなのが好きなんだよな」
 そう言いながら、安形は希里の足首を少し前へと押す。唐突な台詞に希里が疑問を浮かべた瞳を安形に向ければ、それで、と安形は言葉を続けた。
「こう言う、マニアックなのが、嫌い」
 丁度、顔の真横辺りに来ていた希里の足の側面に、安形は舌を這わす。ぞくん、と背筋を走り抜けた感覚に、希里は小さく声を響かせた。そのまま舌を唇から覗かせて、足の裏へと動かす。
「・・はっ・・・・ぁ・・・」
 熱の籠もった息を吐きながら、希里は爪先を震わせた。逃げ惑う足先を辿りながら、安形はそっと右手をもう片方の脚へと伸ばす。まだ脱がし切れていないズボンの上から足首を掴み、指先に布を絡めると同時に、目の前で踊っていた親指を口に含んだ。
「! ・・・どっ・・何処、嘗めっ・・・んんっ!・・・・」
 逃げ掛けた足首を掴み、安形は目を閉じて口の中で指に舌を這わせ続ける。右同様、暴れる左足を押さえる振りをしながら、絡む布を膝へと引き上げた。
「はなっ・・っう・・・離せぇ・・っ・・」
 涙混じりになっていく甘い喘ぎが、触れる舌に羞恥だけでなく快楽も感じてると安形に教える。右手で布越しに膝を撫で、安形は脚が抜け出て空になったズボンの片側を握った。気付かせない為に一度希里の指を解放し、今度は踵から足の裏をゆっくりと舐める。
「・・んっ・・・んぁ・・やぁ・・・・」
 希里は拘束された手でカーペットに爪を立てながら、舌の感触に翻弄されて涙を流した。それでも時折、自分の格好を思い出して、歯を食い縛って脚に力が籠もる。今はそれを放置して、安形は手にしていた布を希里の膝にくるりと一周廻した。安形の舌が小指に絡み付き、側面を唾液が滴る。その感覚に身震いしている希里は、安形の右手の動きに気付かなかった。
 安形は薄く目を開けてそれを確認すると、今度は徐々に掴んだ足首を押しながら右手の布も同じに引く。ただ見られまいとキツく合わせられた脚が、ゆっくりと自身の胸元に寄り、呼応して腰が浮いた。瞬間を読み取って、安形は希里の足首を外へと広げる。唇を離しすと、代わりに脹ら脛に噛み付いた。
「ひぁっ・・あっ!」
 背中が仰け反った一瞬を狙って、安形は掴んでいたズボンの片側を腰の下へと通す。不意に与えられたら刺激に力の緩んだ膝が開き、希里の右脚はきれいに胸の横まで広げられた。慌てて希里がまた脚を閉じようとするよりも早く、安形は自分の身体で希里の脚を押さえ付けて、希里の右の太腿と二の腕とをズボンで縛り上げる。左膝に絡んだズボンはそこを身体の真横近くまで引き、逆の脚は腕と共にズボンで縛り上げられ、希里は大きく脚を開いた格好で身体を固定されてしまった。
「あがっ・・・い、つぅ・・・・」
 怒鳴ろうとした瞬間、軋んだ身体に、希里が眉根を寄せて呻きを上げる。身体の柔らかさが災いして酷く淫らに開いた脚の両の足首を持ち広げ、安形は更に希里の腰の下に膝を突き入れた。背中が仰け反り、日の光の下に晒された中心に安形は視線を向ける。
「いやぁ、オレの舌技、喜んで貰えたみてぇで」
 満足げな笑みで安形が視線を注ぐその場所は、脚を嘗めている間に反応し、少し勃ち上がっていた。
「・・見・・・んじゃ、ねぇっ・・・いっ・・・・」
 強がって文句を言いながらも、無理な体勢の痛みと視姦される羞恥とで、希里の語調は弱々しいものになっている。染まり上がった全身と涙の滲む瞳。それでも何処かしら険を持って、希里は安形に視線を向けていた。
「・・・・なんか、」
 牙を立てる様に歯を食い縛って見上げてくる表情を見ながら、安形は右手だけを離して希里自身に手を添える。軽く撫で上げてやれば、希里は小さな声を上げて快楽に振り回されて目をきつく閉じて下唇を噛み、更に指先で先端を刺激すれば、耐え切れずに涙を流しながら断続的に小さな喘ぎを漏らす、その表情。見ている内に、安形の胸の奥でチリチリと小さな熱が爆ぜた。
「悪ぃ。ちょっと、火ぃ点いた」
 無表情に近い表情で安形はそう言うと、右手をそこから離してベッドサイドへと伸ばす。指先に触れた小瓶を余裕無さげに手にすると、口で瓶の蓋を開けた。
「最初は『恥ずかしいから、止めて下さい』って言やぁ、止めようと思ってたんだよ」
「・・え・・・あが、た・・?」
 声の調子が微妙に変わった事に、希里が少し不安を覗かせる。安形はそれに気付きつつも、手にしていた瓶を中心の真上で傾けた。
「・・・ひぁっ・・・・っあ・・」
 勃ち上がったものの根本に触れた液体の冷たさに、希里が涙を散らしながら声を上げる。ゆっくりと落ちる粘性の液を、安形は位置をずらして後ろへと垂らしながら、希里に言った。
「お前ぇが泣いても喚いても、止めれねぇ」
 十分にそこが濡れたのを見て、安形は瓶を投げ捨てる。安形の言葉に息を飲んだ希里の表情を見て、安形はニッと笑った。

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