シャツのボタンを全て外し終わった安形の手が、素肌を滑る感覚に希里が身震いする。
「・・・っ・・・・・・」
 既に何度か施された口付けに濡れた唇から洩れ掛ける声を必死に抑える姿を見ながら、安形は更に上へと手を動かした。胸元の突起に指を触れさせると、くぐもった声と共にネックレスが小さな音を響かせる。
「・・・・・・キリ」
 いつも以上に強張っている身体に、安形が希里の名前を呼んだ。耳元近くで響いた声に、希里がまたびくりと震える。声を抑える為に噛み締められたまま動かない唇に、安形は微かな嘆息混じりの息を吐いて指を止めた。
「キリ、どうかしたか?」
「・・・・・・な、にが・・・?」
 止んだ快楽に、希里がどうにか口を開く。涙ぐんだままで安形を見上げてくる瞳を覗き込みながら、安形は問い掛けを続けた。
「初めてって訳でもねぇのに、随分緊張してっから。止めっか?」
「バッ・・・! してねぇよ、緊張とかっ! いいから・・・続けろ」
 安形の言葉に真っ赤になって反論を吐くと、希里はそのまま拗ねた様に横を向く。へーへー、と返事をして、安形はその頬に口付けた。瞬間、希里が目を丸くして驚く。また文句を言われる前にと、安形は頬から舌を這わせながら耳へと唇を動かした。
「・・・んっ・・・ぁ・・・」
 唇から小さな喘ぎが漏れ始めたのを聞きながら、安形は指の動きを再開させる。少し堅くなったそこを軽く転がして弄びながら、希里の耳に嵌っているカフスに舌で触れた。舌に広がった金属の味を感じ、耳に響く声を聴きながら、そこへと軽く歯を立てる。
「・・・あっ・・・っ・・・」
 声を上げながら過剰な程に希里の身体が跳ねた。右手で胸元の飾りを摘まみながら、わざと音を出して耳を吸い上げると、希里は身体を震わせながら声を上げる。
――感じては、いるよなぁ・・・
 目の端で希里の顔を見れば、微かに涙を浮かべて息を荒くしていた。顔だけでなく肌も上気させて、安形が指と舌を動かす度に瞳を瞬かせ、そこから時折涙を流す。その様子を見れば、その気が無い訳では無いと思うものの、左で触れている腹の辺りは妙に固く強張っていて、安形に緊張を伝えていた。
――何なんだろ、今日は。
 家に誰も居ない今日、初めて自宅に連れ込んだ。その際に希里が渋っていたのは確かだが、それでも希里が本気で嫌がっていたなら、それ位は安形にも分かる。何よりも本人が、分かった、と言ったのだ。顔は真っ赤にして、俯いて、渋々と、だが。
――少しでも嫌なら、絶対ぇイエスとは言わねぇからな、このお姫様は。
 希里に言えばとんでもない報復が待っている様な事を思いながら、腑に落ちないながらも安形は左手を動かした。腹筋をなぞりながら、その下のズボンのベルトへと手を掛ける。金具を外し、その下のボタンへと手を掛けた所で、安形の唇から希里の耳が逃げ出した。
「・・・っ・・・!」
 歯を噛み締めて、びくりと怯えるかの様に希里が震える。流石にこれは、と安形も左手の動きと止めた。
「キ・・・」
 名前を呼ぼうとした瞬間、安形の左手首が希里の手によって掴まれる。顔を伏したままで、希里の視線が一瞬安形を見て、また逸らされた。
「・・・・・・やっぱ、ちょっと・・・明るい、と・・・」
 酷く言い難そうにしながら、希里がそう漏らす。その言葉と表情に安形の目が驚きに軽く見開かれた。
「そう言や、いっつもは暗かったけか」
 思い起こせば今までは、カーテンの閉まった薄暗い放課後の教室や、人気の無くなった夕暮れ時の生徒会室。ここまではっきりとした明かりの下は初めてだった。
「・・・・・・・・・」
 安形の視線を受けたまま、希里は更に顔を俯かせる。銀の髪から覗く頬と耳とが真っ赤に染め上げられているのを見て、安形の中でちょっとした悪戯心が芽生えた。
「何か、見られたくない傷があるとか?」
「そ・・・そうじゃねー・・・」
「じゃ、何で?」
「何でって・・・そりゃ・・・・・・」
 口籠る意地悪気に微笑んで、安形は答が解っている質問をする。そのまま黙ってしまった希里の首筋に、安形は再び舌を這わせた。
「なっ・・・待てって!」
「理由が分かんねぇから、待たねぇ」
 暴れ始めた身体を押さえ付けて、安形は左手でズボンのボタンを外す。止めようと手首を握る力が強まった瞬間を読んで、安形は右の指で触れていた粒を強く捻り上げた。
「あっ・・・やめっ・・・っ・・・・・・」
 びくん、と希里の身体が震えると、手首の力が少し緩む。その隙を縫って、安形は左手で希里のベルトを抜き取った。え、と驚く希里の腕を取って床へと俯せに倒すと、安形は希里の両手首から肘までを背中で合わせる様にベルトで締め上げる。
「ちょっ・・・安形っ、テメェ!」
「だって本気でお前ぇが暴れると、オレ負けるし。ハンデだって」
 ベルトの金具を止め終えて、安形は希里の上に乗った状態でそう言った。見下ろす視界の中で、希里が悔しげに安形を睨み上げてくる。噛み付かれそうな勢いにぞくぞくとしながら、安形は希里のシャツの襟に指を掛けた。そのまま指を動かしていけば、ボタンの外れたシャツはいとも容易く手首まで下ろされ、白い肌が日に曝される。
「おまっ・・・脱がすなっ、やめ・・・あっ!」
 安形の舌が肩甲骨の形をなぞる様に這い、希里の言葉が半ばで止まった。手のひらを脇腹に添わせると、手のひらの中の身体がびくびくと震える。
「やっ・・・や、めっ・・・」
 震えを楽しみながら肌を吸い上げれば、希里が顔を仰け反らせて声を上げた。目を眇めてその様子を後ろから眺めながら、安形は一度唇を離す。
「も・・・やめ・・・・・・」
「だから、何でって。理由言うまで、続行」
 安形は身体を起こし、希里の両脇に腕を突いて顔を覗き込んで笑う。希里は真っ赤になったまま安形を睨み付けるが、一向に答を口にする気配は無かった。たった一言、恥ずかしいから、と言えば止めるつもりの余興だったが、強情な態度に安形の中に少し怒りが湧く。
「そーゆー態度、ね」
 笑みを消して、ふぅーん、と呟くと、安形は希里のズボンの前に手を滑り込ませた。
「なっなに、なにす・・・っ」
「何って、続行っつったろ」
 暴れる脚を身体で封じ、ジッパーを下して中に手を差し入れる。触れた素肌が強張るのも気にせず、安形はズボンを下着ごと一気に膝まで脱がした。無理矢理腰に腕を廻して持ち上げ、そのままズボンを引き摺り下ろす。
「安形ぁ!!」
「うっわ、凄ぇカッコ」
 威勢良く怒鳴り付けてきた希里に、安形は被せる様に笑みを含んだ言葉を投げ掛けた。安形を睨み付けていた怒りの形相が、その言葉で自分の格好を自覚して恥ずかしさに歪む。俯せで肩を床に付け、安形の手に無理強いされて腰を高く突き出したまま、ぱくぱく口を開け閉めしている希里を眺めながら、安形は太腿の内側に手を滑らせた。見られている緊張から軽く指を這わせただけで過剰な程に反応する身体に、安形は胸の奥が妙に擽られる感覚を覚える。
――口にしたら絶対ぇ殴られるけど、こう言う所、可愛いんだよな。
「・・・ふざっ・・・あが、た・・・やっ・・・」
 殆ど裸に近い格好で強がって文句を言いながら、希里は身体ごと色付かせて、安形が手を動かせば反応して小さな喘ぎを上げた。そんな自分の声にまた羞恥を覚えたのか、目をきつく閉じて歯を食い縛る。その表情が安形に取って可愛くて仕方が無いのだが、以前うっかり口に出した時、死ぬ程激怒された挙句に途中で行為を中断されたので、それ以来は言わないように心掛けている。
――今日はコレ、堪能させてもらお。
 安形の手の動きに抵抗する力も失われつつある身体を眺めながら、安形はそう考えた。

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