安+榛 安椿前提/椿修学旅行

 いつも以上にぼんやりと、安形は天井を見上げていた。二年生が修学旅行中の為、現在生徒会室には安形と榛葉の二人しか居ない。
「・・・安形、気ぃ抜け過ぎ」
「だってよぉ・・・」
 盛大なため息をついて、安形はそっと空になっている右斜め前の席を見詰めた。
「・・・居ないんだぜ?」
「そんなの今まで授業中だってそうだったろうが。たかが三日で何を言ってるんだよ、お前」
「でもな授業中は同じ校舎の空気吸ってんだぞ? そんだけで満足出来る」
「うっわぁー・・・素で気持ち悪い」
 真顔で言い切る榛葉に、酷いっ、と安形が一言言った。
「取り敢えず椿ちゃん日本には生息してるんだから、同じ国の空気吸ってるって事で満足してなさい」
「・・・・・・おぅ、頑張ってみる」
 ぐったりと机に突っ伏す安形の側に歩み寄ると、榛葉はその後頭部に雑誌を乗せる。何?、と安形がそれを手に取ると、それは一冊のグラビア雑誌だった。
「これで元気出しな」
「これでってもなぁ・・・椿の方が可愛いじゃん」
 それでもパラパラとページを捲りながら、詰まらなそうに安形は文句を言う。予想通りの反応に、榛葉はため息交じりに言った。
「言うと思ったけどね。27ページの特集」
 んー?、と特に興味無さそうに安形は呟く。
「椿ちゃんにそっくりな子」
「27ページな! 特集?!」
 俄然やる気になって、安形は勢い良くページを捲り始めた。目的のページに辿り着いた瞬間、雑誌を掲げ上げて叫ぶ。
「そっくりじゃねーかっ! イける、これイけるわ!!」
「予想以上の反応、ありがとう。そこまで喜んで貰えるなんて・・・正直、複雑だよ・・・・・・」
 何だか魚の死んだ様な目になる榛葉に全く気付かず、安形は雑誌を抱き締めて歓喜していた。その動きが、不意にぴたりと止まる。
「あのさー・・・・・・多分、汚すと思うんだけど、この雑誌借りていい?」
「あげるから! 絶対に返すな!!」
 ああ、何でオレはこいつと友達やってるんだろう。榛葉はまだハートマークを辺りにまき散らしている安形を見て、心の底からそう思うのだった。

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -