安+ボス+サス ビスケ

「こらっ、ボッスン! 近付き過ぎだ!」
 目の前にあるボッスンのシャツを後ろから引っ張り、テレビの画面から引き離すと安形はため息をついた。起き抜け一番に同じマンションに住むボッスンとサスケの母親から、急に用事が入ったから、と子供を押し付けられたのはほんの小一時間前。母親が側を離れるのには慣れているのか、二人は全くのアウェイにも関わらず、いきなり安形の家で好き放題を始めた。そんな二人を大人しくさせる為、適当にテレビをつけたのがつい三十分程前の事。予想以上にお気に召したらしく、二人は食い入るようにテレビを見ている。
「腹減った・・・眠い・・・・・・」
 ぶちぶちと文句を言いながら、それでも安形は二人がテレビに近付き過ぎないように気を配っていた。それでも流石に朝食も取っていない状態はキツいと、一瞬だけ離れて何かを口にしようと腰を浮かせ掛けた。が、ズボンに何かが引っ掛かる感覚に動きを止める。
「・・・・・・・・・」
 視線を落とせば、無言でサスケがズボンを引っ張っていた。少し顔を上向かせ、ふっと安形は息を吐く。
「はいはい、どっか行ったら駄目なんだな」
 諦めて安形は再度腰を降ろした。ほっとしたのか安形のズボンから手を離したサスケは再び画面に顔を向ける。興味がある物に近付くのは子供の習性なのか、サスケも兄のボッスンと同様に安形が気付かないうちにじりじりと画面に引き寄せられている。慌ててシャツを掴もうとしたがもう届かない距離になっており、安形は思わず声を上げた。
「サスケ、テレビ近い!」
 怒鳴ったのが悪かったのかビクッとサスケの肩が跳ねる。振り返りしょんぼりとするサスケを見ると何と無く罪悪感を感じてしまうが、それではサスケの為にならないとぐっと我慢し厳しい顔を作った。
「・・・・・・・・・」
 無言のままテレビから離れ、サスケは安形の側まで来ると、
「!!」
 そのまま胡坐を掻いていた安形の膝の上に座った。驚いて目が点になっていた安形と膝に座ってじっとテレビを見るサスケを見て、今度はボッスンまで安形の後ろに回るとその右膝の上に身体を投げ出す。
「・・・・・・お前ら、家でいっつもこうなのか?」
 画面に目を向けたまま、双子は二人してこくこくと頷いた。
――お父さんの居る場所がテレビを見てもいいボーダーライン、ね・・・
 良い教育してるわ、あそこの家、と呟いて、安形は膝の上の双子のそれぞれの頭を右手と左手でわしゃわしゃと撫で、そして小さく微笑んだ。

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テーマ「人外ファンタジー」
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