06


昨日の夜、赤葦くんと本当に些細なことで喧嘩した。
朝は私の方が早かったから挨拶はしていない。

『はぁ....』
「双花ちゃーん?」
『うわぁ!....な、中原さん!?』
「大丈夫?魂抜けてたけど...」
『ちょっと色々ありまして...』
「もしかしてさ、今日怒ってる?」
『あー...ちょっとだけ』
「だからか...今日のマスクすっごい怖い顔してる。いい」
『え!うっわ、本当だ!』
「早く仲直りできるといいね」
『え』
「さて、仕事に戻りますか〜」

中原さんは私の職場の先輩で大ベテランの先輩。
ちなみに40歳男性で子持ち。ちょっとメタボ気味。

今日こそ、彼に謝ろう。
心の中で決意をして残り数時間の仕事を頑張った。



家に帰ると電気はついてなかった。まだバイトかな。
ただいま午後6時。そろそろ夕飯も作らなきゃ。

『ごめんね、ごめんね...ごめんなさい?』

一人でブツブツ言いながら夕飯の準備をしていると、ドアが開いた。
平常心、そう平常心。

『おかえりー』

....返事がない。ただの屍のようd((じゃなくて。

『おーい、赤葦くーん?』

『あかぁーしぃー』

返事がやっぱりない。なんだ奴は。

『あーもう!!』

玄関まで見にいくと、なんだか変な顔をした彼が立っていた。

『何て面してんの、このやろ』
「...元からこういう顔です」
『はぁ....いつまでもうじうじしてないで。ほら、おいで』

腕を広げると、遠慮したようにちょっと弱弱しく抱き着いてきた。

『抱き着く元気はあるようね』
「...双花さん」
『なんだね』
「昨日はすみませんでした」

なんだ、喧嘩したのが気まずくて入りづらかったのか。
可愛いやつめ。ナイショだけど。

『んーん。私もごめんね。よしよし』

頭をなでると強く抱き着いてきた。お、折れちゃうよおばさん...

『ご飯作ってるから、離れるよー』
「いやです」
『だめです。ほら離れてー』
「嫌です」
『はぁ....じゃあせめて後ろにひっついて』
「はい」

こうして今日は少し狭いキッチンで動きづらい恰好のまま調理しました。


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