9時までの時間は本当にあっという間だった。

ゲームセンターに行って、ゲームしたりプリクラ撮ったり、
カフェに入って黒尾さんの話をいっぱい聞いた。

『男の人とプリクラなんて中学のクラス会以来です』
「俺もほとんどなかった」
『なんか新鮮ですね』
「だな」

プリントされたシールには楽しそうに笑う彼と私。

「そろそろ行くわ、またな大海ちゃん」
『わ、ちょ!....黒尾さん』
「ん?」
『あのっ....』

"遊びに来てください"なんて言っていいのだろうか。
東京から宮城まで来るのにはすごく交通費がかかる。
それに彼だって受験生で主将で、本当は今日だって....

「大海ちゃん」
『...はい』
「また来るから」
『え?』
「お前は気にしなくていいの」
『髪ぐしゃぐしゃにするのやめてください!』
「ねぇ大海ちゃん」

黒尾さんが何か言ったとき、新幹線が来た。

『あの、何か言いました?』
「何も言ってねーよ。澤村によろしくな」
『あ、はい....』
「じゃ、帰るね」
『く、黒尾さん!』
「ん?」
『また来てくださいね!今度は連絡してから!』
「おう。じゃーな」

黒尾さんが新幹線に乗り込んだ。
窓ガラスの向こうで彼はなんだか悩んだようなさみしそうな顔をしていた。

---私はそれに気づかぬフリをした。

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